デーテーペーな1日

1999.02.01~15


日記関係の発言はこちらで。

2月1日(Mon)


「犬の子」

 人間を平手で殴ったりすると自分の掌も赤く腫上がったりするものだと知った母は、それからはほうきやはたきの柄を使うようになった。その上、洋服が破けるからと言って下着までもはぎ取って素裸にして、はたきの柄がささくれ立つほど打ちすえるものだから僕の背中はみるみる裡に赤いみみずばれでいっぱいになった。
 見かねた隣の部屋の住人が止めに入ろうとしても、そんな日の母親は誰の言う言葉にも一切耳を貸さず、ひたすら己の裡にある憤怒に身を焼かれて地団駄踏んでいた。他者が顔を出せばさらに逆上するその様子に言葉を飲込んだ隣人はなにも言えないまま、ドアを閉めた。
 裸のままで部屋の外に放り出そうとする母の意図を知った僕は、部屋の隅にむき出しになったままの柱に抱きついてなんとかそれだけは逃れようと、子供ながらに必死の思いでいた。指先が真っ白になるほどに固く握りしめた指をひとつひとつ剥がすようにして柱から引離すと、それでも外に出されまいとして暴れる僕を横抱きにして廊下に出ると、そのまま板壁に犬の子を捨てるように投げ出し、ドアを思いきり閉めた。
 そう・・・まさしく僕は捨てられた犬の子そのもののような気がしていた。新聞紙を敷きつめた段ボール箱さえなくて、薄暗い廊下の隅で裸でブルブル震えている、弱々しく泣くことしかできぬ存在だった。誰かが僕の背中越しに通って行くのだが、決してそれ以上近づこうとはせず、まるでなにも見えないかの如くに足早に通り過ぎていった。

 寒くて、痛くて、苦しくて・・・古い木造アパートの廊下の片隅で素裸で震えている筈なのだが、いつしか僕はこの「時」と「場所」がはたして夢なのか現実なのかが解らなくなっていた。夢の中ではすべてが曖昧で、想いだけが鮮烈だった。

 ドアが開いた気配に振り返った僕は、胸の奥でひとこえ唸りをあげると、目の前に立つ女の喉首めがけて飛びかかった。
 柔らかな頚動脈を思いきり喰いちぎると、ひときわ暖かいものが僕の喉元をごくりと流れ落ちた。

 私の裡にある妄想が時として確固たる記憶だったように思えるときがあります。その生々しいまでの感触に触れたとき、私の妄想はきっと現実に変化しているのかも知れません。



2月2日(Tue)

 近所のファミレスチェーンからハガキが時折届くのは「ひまわりクラブ」だかなんだかの料金無料の会員メンバーに子供達の名前で登録してあるからのようです。
 誕生日にお子さまランチのサービスだとか、そのハガキと引換にビンボーくさいぬいぐるみやらポシェットが貰えたりするようです。タダのプレゼントに目がないわが家としてはそんな時は一家総出でお出かけです。
 キティちゃんのポシェットが良いとか、こっちのマイメロのリュックのほうが可愛いとか、奥さんも一緒になってハガキ眺めてはうるさいこと。どうせ原価100円程のチープな代物だと思いつつ、「タダ」と言う言葉にうかうかと乗せられて、まったく店側の思う壷なんですがねぇ・・・つくづくとビンボーくさい家族です。

 もっとも、注文もとってもビンボーくさいんですけどね。えぇ、ファミレスだと大抵はハンバーグとライスです。しかも子供達のライスは取り皿もらって一人前を二人で分けるというせこさ・・・だって、外食してごはん残すのが父親はとっても落ちつかないんです。お皿にくっついたご飯粒もフォークでこそげ取りたい気分なんですが、さすがにそれは人目があるんでなんとか我慢してます。そんな時も奥さんは贅沢にもイタリアンハンバーグで、ひとりだけチーズが乗っかってます・・・あぁ、そんな事がとっても気になるようです。でもそれって目玉焼がついてないのがとっても不当な気がするぞ。資本主義的倫理観からも納得しがたいというか・・・普通のハンバーグより値段が高いのがどうにも解せないんです。そういえば、マクドナルドのハンバーガーとチーズバーガーのあの値段の違いも実にけしからんなぁ。バリューセットだと値段が同じなのはどう考えてもインチキだぞ! くそ、今度マクドナルドに苦情のメールだそうかしら。

 そうした時にマジでムキになる性格なんです。同じ値段ならチーズバーガー頼んだ方が得だと頑なに思いこむタイプだから、子供達が普通のハンバーガーが良いと言っても断固そっちです。
 何れにしてもつまらん事を熱く語るオヤヂなんて、いかにもビンボーくさい話しです。



2月3日(Wed)

 今日はさすがにこの冬一番の冷え込みと天気予報のおねえさん達が強調していた通り、やたらと寒い一日でした。相変らず事務所はストーブつけてもちっとも温まらないので、夜になるとキーボード打つ手がかじかんでます。
 こんな夜は誰かに固く凍りついた僕のココロを溶かしてもらいたい気分ですが、あいにくわが家の「町でいちばんの美女」はいたって常識派で面白味に欠けるから、そうした不明な思いを伝えるにはとても不向きな人のようです。
 がはははh、わが家の奥さんに不明な思いをぶつけてる暇が有るんなら、さっさと温かい布団に潜り込んでたまには早寝した方が良いような気がしますが・・・それが出来れば苦労はしないんでしょう。

 そうそう、あまり興味はなかったんですが一応本日は「節分」と云うことなので豆まきだけはしました。えぇ、わざわざ鬼の面がなかったので厚紙にコピーして手づくりです。
 どうせ「はやく掃除しなさい!」と母親に怒られるだけなんですけどねぇ。そう云えば去年は落花生まいたんだっけ。後で歳の数だけ食べるときに便利なんですが、落花生まいてもあまり節分気分は盛上がらないので今年はちゃんとした「豆まき」でした。
 小さい頃は親子でムキになってまいていたんですが、お互いに気恥ずかしくなってきて最近はさすがにおとなし目です。今年は一応居間だけにしておきましたが、それでもあとの掃除が大変です。
 あぁ、いくらもったいないからってテレビの裏側に入り込んだ豆まで食べるのはちょっとイヤかも。

 例の太巻寿司まるかぶりはやってません。僕はあのかんぴょうが大嫌いなので太巻寿司は昔から苦手なんです。そのくせ母親が運動会や遠足で作るのは決って太巻寿司。そうしたときのお昼の時間がとっても憂鬱だったなぁ・・・って、節分からどうして回想モードに入るんだか。



2月4日(Thu)

 ここの処、ヒマに任せて昼間からケーブルテレビの映画専門チャンネルなどを延々と観ていたりします。映画館に足を運んだ事といえば子供達にいい加減せがまれて、もうそろそろ空いている頃だろうと封切り終了直前に仕方なく出かけた「もののけ姫」が一番最近で、その前ともなると「仁義なき闘い」シリーズぐらいかも・・・って、いくらなんでも古すぎますか。離婚騒動で世の奥さま連中からブーイングの嵐らしい松方弘樹も、あの頃はかっこよかったのになぁ。アタマは昔から悪そうでしたが。
 がはははh、こんな処で映画俳優テロってもしょうがないか。

 途中チラとだけ観た「トリコロール/白の愛」は、主人公が捨てられた元妻役の女の子だけ注目してました。この娘、どこかで観た覚えがあるんですが記憶力に乏しいので確かなことは判りません。いかにも日本人好みのフランス人って感じでしょうか。生れついての薄倖そうな処が不幸フェチには堪らないようです。でもほんとは幸せな人生送ってるんだろうなぁ。まぁ、ひとの人生なんでどっちでも良いんですが。

 フランス映画の「不幸好き」ってのも、マニアにはなかなか捨てがたいようです。トリフォーだったかなぁ・・・隣りに別れた昔の恋人が越してきて、お互い既に結婚しているにも関わらずかつての想いが忘れられずに深い関係に陥って苦しむんですが、最後は絶望した女性がエッチしながらお互いの頭を拳銃で撃ち抜いて無理心中するお話しがあって・・・いくらなんでもそれはないだろうと思いつつ、なんとも強引な不幸フェチぶりに実は秘かに憧れていたりするのかも。
 相手の男が手塚治虫のマンガの中の登場人物みたいな鼻のでかいジェラール・ドパルデューなのが唯一ミスキャストだったと思うんですが。フランスではあんなオッサンがもてるのかなぁ。ひょっとしたらフランスに移住したいかも。がはははh、

 お気楽映画時評なんだか己の不幸願望なんだかよく判らなくなってきました。少なくとも例の「失楽園」の雪の中での凍死よりはいっそひと思いな処がビンボーくさい情緒からは無縁で、僕は好きなだけなんですが。



2月5日(Fri)

 ネタないっす。

 はい、昨日と今日の違いが自分でもよく判りません。先週と比べても同じようなもの・・・去年の日記を読み返してもまるで違いはないようです。
 僕の人生、既に結果は出てしまっているようです。どこで結論が出てしまったのかは不明ですが、ある日を境に愕然とするといったものではなかったような気がします。ただなんとなく・・・1日の終りに希望を見失ったときから、僕にとっての人生とは、何れ黄昏れていく事をかくの如き退屈な1日と共に予感するようなものなのかも知れません。
 がはははh、日記のネタがないのでたまには鬱な日記でも書こうかと思ったんですが、お腹がいっぱいでどうにもそんな気分にはなれないようです。最近仕事が暇なせいなのか、することないのでよく食べてるようです。
 で、本日の夕食は焼肉でした。お肉はツーパックともカルビ。奥さんはロースが好きなんですが、僕の場合はあくまでもカルビが好きなんです。それも、脂身が多くて薄っぺらな安物の肉の方が口に合うという根っからの貧乏人。偏食家というのはキライなものが多いせいか、好きなものにも一般的ではない偏りがあるようです。あと、家で焼肉食べるときは最後は必ず焼そばが出ないと気が済まないの僕のこだわりです。なんだかよく判らないんですが、いつの間にかわが家ではそれが決りになってます。奥さんも子供達も焼そばは好きじゃないんで、結局僕一人でもくもくと食べてるだけなんですが。あ、ホットプレートで目玉焼作るというのもお決まりです。
 なにかと決り事を作りたがるのは、食事というものに一家団欒の幻想を仮託しているのかも知れません。なんちゃって。

 一家四人で2パックだと肉はかなり競争率高いです。茄子やピーマンは野菜類のなかでもいたって人気がないので、子供と父親で押しつけあってます。自分は茄子3ヶも食べたのに正美は2ヶしか食べてないと、麻美がしつこく文句言ってる横で、父親はこっそり自分の茄子を正美のお皿に・・・がはははh、



2月6日(Sat)

 今日は朝から何もすることがなかったので、仕方なく朝イチャなど1ヶ。いやん、

 朝っぱらから仕事もしないで怪しい振舞いにおよんでいるものだからよほど暇だと思われたんでしょう・・・奥さんから今夜の夕食はパエリアつくってね(はぁと)、などとリクエストが。仕事もしないで朝イチャなんぞしてると碌な事にはなりません。ま、朝イチャしかすることなかったのはホントなんですが。がはははh、
 いい歳してそう何度も「朝イチャ」連発しなくてもよさそうなものですが、案外見栄が言わせてるセリフなのかもしれません。そろそろ例の「バイアグラ」の発売が待ち遠しい年頃ですから。あれって医師の処方箋が必要なんでしょうね。まさか町の薬局でアリナミンとかコンドームの横で山積みなんて事にはなりそうもないから・・・でも、何科に通えば良いんでしょう?やっぱり泌尿器科でしょうか。それとも内因的な要素が多そうだから精神科でしょうか。大学病院あたりだと「不能外来」なんてのも新設されるかも知れませんねぇ。いい歳したオッサンが殺到して病院の待合室でクスリを渡されるのをじっと待ってるなんて相当に恥ずかしい状況かも。目だけぎらぎらさせて若い看護婦さんじっと眺めてたりするとちょっと怖いなぁ、って・・・今から完全な媚薬扱いで、随分とおかしな期待に胸ふくらませてるようです、このオヤヂは。

 朝イチャネタはもうイイや。で、本日の夕食はパエリアでした。スープはワカメと卵のコンソメスープ。わが家の食卓はどうも野菜が少ないと言われたのでサラダも作ろうかとも思ったんですが、キャベツしかなかったのでヤメにしました。普段からサラダは必ず作るという訳ではありません。
 うーん、ひょっとすると野菜食べないせいで栄養が偏ってるから「バイアグラ」が必要になるのでしょうか。だとしたら野菜サラダは毎日食べますけどね。えぇ、ピーマンだろうが人参だろうが、この際だから無理にでも。きっと奥さんも連日野菜炒め作ったりするのかも。

 解禁されたからと言って医者に処方箋書いてもらうのは恥ずかしいから、そんな時はやっぱりネットで通信販売でしょうか。なんでも「バイアグラ」は現在投げ売り状態だとか。何万錠も仕入れて青くなってる人間がいっぱいいるのかも。
 「バイアグラ」とか「通信販売」なんてキーワードでこのページに飛んでくる人もいっぱいいるんだろうな。がはははh、お互いに寂しいよね。



2月7日(Sun)

 普段の日だと「いい加減にしろよ」と言いたくなるほどかかってくる友達からの電話も、日曜日ともなると不思議と一件もかかってこないので子供達は昼までパジャマのままです。奥さんも朝起きたそのままの格好でパン食べたりテレビ見たりで実に怠惰そのもので過すのが最近のわが家的日曜日のお決まりです。父親はといえば、連日の夜更しが祟って一人で昼まで寝てるんですが、いつまでたっても起されることもなくてほとんど見捨てられてます。とほほ。
 まぁ、僕自身も外出に飽きてる処があるので休みの日は昼過ぎにのそのそ起きだして、以後は一日中テレビ見たり本読んだりという生活がほとんどです。何よりお買物につき合うことが少なくなったので家族そろってお出かけする機会が減ったのは、まぁ子供がある程度大きくなればどこの家庭でもそうなるような気がします。子供達も近所のスーパーに出かけようかと誘ってもその気はなさそうだし・・・わが家の家族はとりわけバラバラのようです。
 日曜日は日記の更新も少ないし、ネット巡りしていても相変らずつまらない日記のオンパレードでどうもイマイチのようです。こんな日はとっとと早寝すればよさそうなものなんですが、あいにく昼近くまで寝ていたせいで眠気だけはばっちり解消で、夜になると共に元気いっぱい。

 これからどうして長い夜を過そうか・・・夜の闇に紛れて電子の海で漂う「あなた」をそっとこの手に抱きしめる為に出かけようかと、一人思案中です。

 なんてね。あぁ、ヒマです。することないんでお風呂でも入ってきますか。



2月8日(Mon)

 今夜の夕食はカレーでした。

 なんて・・・すっかり「夕食日記」と化しております。うっかりお代りなんかしたものだからお腹がいっぱい。珍しくサラダも食べました。なんてのも毎日同じで、実にどうも変化に乏しい毎日のようです。
 食べて、寝て、たまに朝イチャして、仕事はいい加減に・・・これで生活が成立つんならこんなお気楽な人生はまたとないのかも知れません。
 残念ながらそんな贅沢は望むべくもないので、仕方なく仕事もするんですが、もともとやる気がないんですから仕事に熱中できないのは最初からです。なんとなく人生が過せれば僕はオッケーだし、あくせく働いたところでどうせ最後はたれ流しの寝たきりボケ老人なら、最初からほどほどと考えておけば己の人生を嘆くこともなくなるような気がします。いい加減浪費してきた人生なんで、いつ何時精算を言われても文句はありませんから、そのあたりもお気楽なものです。今の処随分とおつりがあるような気がします。
 うん、「おつり的人生」なんてのは実に無責任でなかなか魅力的です。その上、実際にはにせ金で精算している節もあるから、相手にしてみればほとんどインチキと呼んでも間違いはなさそうです。という訳で、そんないい加減な人間の人生に巻込まれたわが家の家族は実際にはとっても不幸なのかもしれません。えぇ、僕自身はあくまでも脳天気なんですが。

 肩すかしな人間なんで、家族はすでにそんな父親には何も期待することはないようです。まぁ、子供なんて父親がほおっておいたって勝手に育つんでしょう。オスがこんなに子育てに参加する時代なんてのはきっとここ100年ぐらいの突発事のような気がします。
 そんな近ごろのオスについてよく言われる生殖能力の低下の原因は、案外そのあたりにあるのかも。



2月9日(Thu)

 また仕事がらみでムカムカすることばかり・・・なんだかなぁ。
 「もらった請求書どこかになくしたらしいからもう一度書いてもらえますか。ついては、経理の〆日までに提出できなかったから支払いは来月まわしです」・・・って、そんないい加減でベラボーな話しが何処の世界にあるんだか。お金のことでフォントサイズでかくして叫ぶのもビンボーくさいからやらないけど、気分は「緋文字のフォントサイズ7」です。やれやれ、

 またやってくれました・・・いつものいい加減な担当者。とにかく迂闊に信用するとろくな事にならないと言うことを認識しておく必要があるようです。そんな人を相手にしていることをうっかり忘れるとかくなる有様だから、要は僕自身がおめでたいだけなんでしょう。お金のことでイライラする自分にもうんざり。

 そんな訳でお気楽日記書いてる気分じゃないようです。まったく・・・特別な事はしてもらう必要はありません。当り前の対応ってのが出来ないんでしょうかねぇ、こういう人は。



2月10日(Wed)

 昨夜は遅くまで公園でウロウロしていると思ったら、どうやら麻美は時計をなくしてしまったようです。何故かよく判らないけど、腕にはめないでコートのポケットに入れたまま遊んでいたようで、思いっきり駆け回ったり縄跳などしていれば、どうしたって落すことになるでしょう。
 今日もピアノ教室の帰りに公園を自転車でグルグル回って探していたようですが見当らないので結局交番に落し物として届いてないか訊きにいったようです。残念ながら近所の交番には届いてなかったようで、帰ってからも気落ちして少し涙ぐんでるかも。子供向けの熊さんの絵が入った、いかにもチープな時計だったのですが、麻美にはそれなりにお気に入りだったようです。
 「腕時計など安いものだから自分のお小遣いで買ったら」と言ったら、もったいないからヤダと返事が返ってくるあたりが、さすが日頃からケチな麻美らしい・・・って言うか、子供用の腕時計ぐらい買ってやれば良さそうなものですが、なくしたからと言ってすぐに買ってたんじゃ日頃の我家の家訓に反するのでこの際は知らん顔しておきますか。家訓と言ったって別に特別なにかがある訳でもなくて、要はケチ臭いだけのお話しなんですけどね。
 父親だって腕時計など持ってなくてオフミの待ちあわせの時には街角の時計探してウロウロしてるんですから、そんな小学生のガキが贅沢にも腕時計が欲しいなんて、ケッ! 

 今年の誕生日プレゼントかクリスマスプレゼントにしようかなぁ・・・腕時計。がはははh、結局は買うことになるんでしょうか。なんだかんだ言いながら、結局は「甘い父親」と思われることもきらいじゃないようです。



2月11日(Thu)


見る。

 車のウィンドウ越しに眺める限りは冷たい雨のようだったが、家に戻って2階の窓から見る頃には、大粒のぼたん雪があらかじめ濡れている道路に少しずつ降りつもっていた。氷を踏みしめるように、ざくざくと音を立てて車が走り抜けていく轍の跡を、それでも辛抱強く白く変えようとして降る雪。そうか、今年初めての雪か・・・

歩く。

 降りだしたみぞれ混じりの雪でうっすらと白くなった公園を眺めて酔狂にも散歩がしたいと言いだした子供達の後から、手袋をして傘をさして、「やれやれ」と誰かに向けて言訳しながら、その実ひそかに楽しんでいるのは我ながら子供じみた振舞いだと自嘲してみるのだが・・・

濡らす。

 湿り気を帯びた雪を掌に受けてみるとすでに結晶は跡形もなく、氷の粒を含んだ水滴がポトリと落ちてはたちまちの裡に冷たいしみとなってナイロン地のわたしの手袋を小さく濡らした。
 子供達は誰もいない公園を二人して駆けていき、わたしは白い雪の上に残ったふたつの足跡をたどりながらボンヤリと歩く。

恐れる。

 襟元が少し寒い。誰もいない公園の、そのひとけのなさにほっとするような・・・その癖、なにかをどこかに置き忘れてきたような気がしてしきりと心が疼くのだが、あえてなにも考えずにいようとするのは、こうした冬枯れた景色の中に立つわたしを包む愚かしい感傷とある種の諦念を少しばかり恐れているかのようです。

想う。

 今日の雪は明日の朝にはただの凍ったぬかるみと化すだけのようです。

 はしゃぐ子供達を遠くに眺めながら、思いはいつも此処にはないのかも知れません。
 灰色の空から湧くように降る雪を眺めながら、しかし・・・呆然。



2月12日(Fri)

 子供達が学校から帰ってくると同時にピンポ〜ンと玄関のチャイムが鳴るのは、ひょっとすると物陰から監視でもしているんじゃないかと思うぐらいです。
 いつものぶさいくな○○こちゃんともう一人の友達の他に、今日は珍しく男の子が二人ほど遊びに来たようです。
 僕はどうも男の子というのが苦手です。がさつで騒がしくて愛嬌がなくて、その癖甘ったれでなれなれしくて無神経な処など、まともに相手していると疲れるばかりで、ついつい不機嫌そうな顔をしてしまうようです。もっとも、それは男の子が苦手というよりも、自分の子供時代を思い出してイライラしているだけなのかも知れません。えぇ、子供時代の僕に出会ったとしたなら恥ずかしさもさることながら、あまりにイヤミなガキなので思わず怒鳴りつけてしまうかもしれません。
 もともと子供達が騒ぐとうるさいんですが、男の子が混じるといつもの混乱ぶりも一層エスカレートするようで、ドスンドスンと3階の子供部屋でなにをしてるんだか・・・安普請なんだからなにかと響くんです。
 いつの間にか静かになってるので様子見に2階に上がってみると、子供達が横一列にテレビの前にならんで大音量で「水戸黄門」を一生懸命観てました。奥さんはすっかりサジ投げて寝室で昼寝してるようです。なんだかなぁ・・・

 最後には居間で長縄跳やろうとするから、さすがにそれは勘弁してもらいました。
 公園で遊べよ、このクソガキども。



2月13日(Sat)

 なんとなく季節外れの海辺の風景が見たくなって、江ノ島にでも出かけようかと奥さんに言ったんですが、「行かない」とにべもないお返事・・・それはねぇ、確かに今ごろの季節に湘南に出かけたところでクソ寒いだけかもしれないし、寒さに震えながらイルカショー眺めるのは僕自身もあまり乗気じゃないけど、なんら考える風もなくて即座にそんなお返事がかえってくるからなぁ。こんなオヤヂと出かけるのは相当にイヤみたい。とほほ。

 結局昼近くまでふて寝・・・がはははh、遊んでもらえなくていい歳したオヤヂがすっかりすねてしまったようです。
 何年か前にも冬の江ノ島に出かけて、あまりの強風と寒さにグッタリして帰ってきた覚えがあるから、きっと奥さんはこりごりなんでしょう。そんな寒い思いをするぐらいなら家の中でテレビでも観てる方がよほどマシと考えるのが普通かなぁ。何せ我家の奥さんは南国育ちのせいで寒さにはめっぽう弱いから、冬場はどうしても出かける機会が減ってしまうようです。
 そう言えば、冬場は例の個数もぐっと減るようです。せいぜい週2ヶぐらいかな。わはははh、また余計なこと書いてます。

 おでかけも朝イチャもなしで、する事ないので仕方ない・・・昼間からベットに潜り込んで本を読んだり昼寝したり。わざわざ遠出してクタクタになって帰ってくるよりは確かにこの方が良いのかも。なによりお金がかからないところが貧乏人には一番です。



2月14日(Sun)

 誰に対してだってへそ曲りな人間なので、「奥さんや子供達から義理チョコ貰ってなにが嬉しいだか、ケッ!」てな具合で、あらかじめそんなものは要らないからとひねくれるのは、まぁ寂しい人間のお約束なんでしょう。
 奥さんなど根っから素直だから、近ごろではそのあたりの反応を見越して最初からチョコレートなど買おうともしません。結婚生活もいい加減長くなってくると「義理」ですらも果すのが億劫なんでしょう・・・とほほ。<寂しいのか?
 ふん、仕方がないからとスーパーダイエーの見切品コーナーで買ってきた「愛情」なんて僕はお断りです。しかも1ヶ100円のチロルチョコだったりするとあまりに悲しすぎるぞ。ゴディバとは言わなくても、せめて不二家ぐらいは・・・ってのもビンボーくさすぎ。
 で、すっかりいじけているオヤヂがここに一人。<本音は欲しかったのか。

 こんな時でもなにかと気を使うのは麻美のほうで、昼間から自分の部屋でなにかゴソゴソしていると思ったら、「おとうさん、はい」と手渡したのは赤いオリガミで作ったハートマーク。小さなハートを周りにぺたぺた貼付けて真ん中には「おとうさんへ」とピンクのサインペンで書かれているそれなりに手の込んだ作品になってます。あぁ、やっぱりきみはどこまでも苦労性のようです。
 「麻美ちゃんが朝から一生懸命作ってたんだよ」と、正美がいろいろと解説してくれるんですが、そう言ってる本人はなにもナシってのがいかにも正美らしいというか・・・きみはやっぱり父親似なんでしょうねぇ。

 マスコミに踊らされ、チョコレート業界の陰謀に乗せられて義理チョコ配るなんて習慣はそろそろヤメにしないと。改めて寂しい己の家庭生活に思いをはせる人間も居るんですから。



2月15日(Mon)

 子供達の小学校では4年生から各自が希望するクラブに入れるようです。まぁ所詮は小学校のクラブなんで落ち研や漫研がある筈もなく、ごくごくありきたりなクラブばかりのようです。
 女の子は合奏クラブと手芸クラブがだんとつの人気だとかで、何事もミーハー的にしか決められない我家の伝統通り、二人ともそんな一番人気の合奏クラブが希望だとか。もっとも希望者が多いと抽選になるとかで、今日の時点ではあくまでも本人の希望を書いて提出しただけのようです。やっぱりぶさいくな○○こちゃんも同じ合奏クラブ希望だとか。ぶさいくがすっかり定着してしまった○○こちゃんですが、そうは言っても子供達には小さい頃からの幼なじみでなにはともあれ一緒のお友達ですから、あまり悪く書かない方が良いのかな。でも、ホントにぶさいくなんですよ。がはははh、

 合奏クラブでどの楽器を受持ちたいかはこれもまた希望者多数の場合は抽選のようで、麻美がクラリネット正美はバイオリンが希望だとか。正美はホントはフルートがよかったらしいんですが、実は彼女はロンパリ気味で、横目を使うと左右の目がそれぞれにあらぬ方向を向いてしまってとっても間抜けなので、なにかと外見を気にする正美は仕方なくフルートは諦めたんだとか。これは小さい頃からなのできっと生れつきなんでしょう。でも、バイオリンも似合わないと思うけどなぁ。我家でギーコギーコやられるとちょっとうるさいかも。
 やっぱり手芸クラブが良いような気がするんだけどなぁ、正美ちゃんと麻美ちゃん。

 今日になってやっぱり麻美から小さなチョコレートが1ヶ。でも、これって袋入りのチョコレートだと思うけど・・・しかも1個だけ。
 まぁ、父親に手渡そうとする気があるだけマシなのかも。正美なんて、相変らず知らん顔ですから。


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