歳時記(diary):二月の項

一日

ちょっと眠い眼で出勤。
比較的順調に業務も進んだかな〜と思いながら、最後に他の先生担当の重症者の様子を見とこうかなと思ってICUに足を向けると、院内で消化管出血の急患発生との由。思い当たる節があって内視鏡室を覗いてみたらきっちり透析患者。
かくして昨日とおんなじパターン。連夜の緊急透析。

処置が済んであとは見守るだけとなると雑談もでてくる。今は独り暮らしで子どもがそのうち生まれるなんて話をしたら、消化器のトップの先生がしみじみ「子ども生まれたら家庭優先にした方がいいぞ」って。‥‥えーと。

二日

布団の吸引力と必死に戦いつつ出勤。
夕方から電子カルテの操作説明を受けたのだけれど、実際に手を動かしているにもかかわらず眠さがつのる。さすがに疲れがたまっているようで。
比較的順調に帰れたのだけれどもそれでも病院を出たのが八時半。買い物して帰って夕食・風呂に洗濯とやっていたらあっさりと日付が変わっていた。

三日

腎臓疾患って若い人もぼつぼついて、外来の2-3割は若い人。
当然女性もいるしその中には子供が欲しいという希望がある人もいる。けれども腎機能が悪いと妊娠・出産のリスクは高くなるし、最悪子供に障害が出たり、母親が血液透析を必要としてしまう可能性もある。
最近では「妊娠を許可する」とは言わなくなっているよう。リスク評価を行い予想される危険について患者に理解してもらいながら、どうしていくか決定していくというあり方になっている。

比較的若く血液透析に導入になる女性にこれまでの腎疾患の既往を尋ねると、妊娠中毒症を経験している人がかなり多い。統計でどうなのかは知らないけれど、周産期には医者にかかってもその後家庭に入ってしまって検診も受けず、末期腎不全になって初めて発見される例なんかみていると、妊娠中毒症のあとの経過観察って必要なんじゃないかと思えてくる。

四日

出勤。そのまま当直。
病棟の患者さんも落ち着かなく、気ぜわしい。

五日

当直あけ。そのまま電子カルテのリハーサルへ。
突貫工事で進められている当院における電子カルテ導入。なんとなく吶喊工事とでも呼んであげたい気分。リハーサルも「どれだけ混乱するか」をリハーサルしたような気が。

執事喫茶ですか。腐女子の妄想が現実に!という企画のようなのですが、執事を養成しても育ってくるのはキース・ロイヤル((C)魔術士オーフェン)みたいな執事なんじゃないかとか思ってしまうわたし。

六日

夜、「荒野の蒸気娘」(あさりよしとお/GUM Comics)「委員長お手をどうぞ 2」(山名沢湖/Action Comics)「小娘オーバードライブ1」(笹本祐一/ソノラマノベルズ)購入。
「要脳内補完コミック」って‥‥>荒野の蒸気娘  リアルタイムに脳内補完しながら読みつつハァハァしている人がいたらあやしいって。

七日

受持が今少なくなっていて、ちょっと余裕モード。
午後は長期入院になっている患者さんの退院カンファレンス。患者さんの思いとしてはそれほど人の世話にならずとも在宅生活ができると思っていたようだけれど、かなり広い範囲にわたって援助が入らないと厳しいというのがケアマネージャーやわたしの判断。そのあたりを伝えて、在宅生活はとても厳しいしたくさんの人に援助を受ける必要があることを説明した。
誰かの世話にならずに生きていきたいという気持ちの人は少なくない。けれども老いや病は時にそんなささやかな誇りすら捨てなければ生きられない状況に人を追い込む。
せめて、肩身の狭い思いをせずに福祉が受けられれば。

八日

学生時代は自炊してたのだけれど、特に最終学年は自炊の意欲も薄れて外食が増えていたりした。
社会人になってもその傾向が強かった(帰宅が遅くて店が開いていないこともあったけれど)のだけれど、最近はできるかぎり食事を家で用意するようにしている。おかずを買って来ることも多いのだけれど、お弁当を買って温めるだけじゃさびしいし。
それを支えているのが帰り道にある二十四時間営業のスーパーなのだけれど。夜は寝る時間って形にならないんだね‥‥。

九日

当直入る前に患者面談していたら食事を摂り損ねかける。腹へって仕事するのはよくないね。(滅)

十日

外来の最後に検査異常値チェックと予約キャンセルチェックが回ってくる。定期受診の患者さんの採血などは、次の予約日まで検査値がチェックされないことはよくある。自覚症状の乏しい異常が出ているときには検査値にしか現れないこともあるから異常な結果だけ早めにチェックするのだが。
カルテの束の中にどっかでみた名前の患者さん。今入院で診ている糖尿病の人の息子さんだったのだけれど、この息子さんも糖尿病‥‥。二型糖尿病は家系にいるとなりやすい病気だけれど。
そのあと自分の外来の予約キャンセル患者をチェックしたら、同じ姓の患者さんが実は親子だったことに今更気づく<莫迦。腎臓病も遺伝例があるとかないとか。人種差はあるそうだけれど。

十一日

Today's 滅殺対象:JRバスの西那須野−塩原温泉バスターミナル間の時刻表。
塩原温泉行く用があったもんでWeb検索してたら、西那須野駅に電車がつくのと同じ時間にバスが発車するようなダイヤになっている。絶対これは変だとか思いつつ、もしそうだったらどうしようなどと考えて到着ダッシュをかけたのだけれど。
ダイヤ改正で五分ほど発車が遅くなっていたのだが、だったら早くWebの情報も修正しておけと小一時間(ry

読了本は「虹の家のアリス」(加納朋子)。それから既読本を読み返したりとか。

十二日

温泉に一泊して帰ってくる。道すがらに鈴木バイオリンサービスにここ二年くらい弾いてない楽器を修理に出して、フジヤカメラで交換レンズを物色して。
それから修理に出しているバイクを引き取りに行きがてら、立川第一デパートを覗く。3Fのメガネ屋(マイスター、だったか)みたらハリー・ポッターのポスターと一緒に丸眼鏡売ってるし。そういう路線のお店が多いようで。

「レモネードBooks」(山名沢湖/Banboo comics)読了。初々しいのが好き。章のタイトルが好き。本好きヲタキャラが好き<だめじゃん

十三日

産科医絶滅史Flash。原文はここ。‥‥ほっとくと医者自体絶滅しちゃうよ〜。特に損得抜きで患者のことを考えてくれるような医者は。

十四日

バレンタイン。机の上に置かれていたチョコの箱には代謝科の先生(♀)の字で「Genesis(仮名)せんせい、これからもDMかんじゃさんよろしくね」と書かれてました(爆死)。
‥‥これ喰っちゃうと糖尿病性腎症の患者さんの紹介がもれなくついてくるのかと悩んでみたり(嘘)。

十五日

【実録】ネコ裁判。‥‥斜め上の世界ってあるもんだなぁ(嘆息)

病棟の看護師さんから遅れてバレンタインチョコが二つ。うちひとつは年配の料理のうまい看護師さんの指導のもと作成されたらしく。作った人たちはうぐぅとかいいながら碁石クッキー焼きそうな(嘘爆)料理スキルと思われるのだけれども指導がよかったか。(‥‥失礼!)

十六日

割と早めに終わったので残業も三時間程度しかつかず(麻痺してる‥‥)、帰りがけに古本屋に寄る。
ついででCDなんかも見て歩いていたら‥‥ONEのOAV(KSS版)全巻揃いのケース入りが。逡巡しつつ、結局散財。まぁ諭吉先生でおつりが来る程度だったからいいけど。
ネット検索して評判見てみると、ストーリーは別物でありながらやっぱりONEのOAV、という感じであるらしく。突っ込み所多そうだな‥‥。

十七日

外来。ひとり副作用怖くて薬やめたいと主張する人がいて。「知り合いが『高脂血症の薬なんて飲みつづけるものじゃない』って言ってた」というのだけれど。‥‥まずその知り合いがコンプライアンス不良患者決定ですが。
薬怖がる人って不思議と薬飲まないことで起きてくる悪い結果を無視してしまう傾向があるようで。恐怖は正常な判断力を失わせるのか。薬飲まないなら飲まないでもいいけど、損得天秤にかけて決めて欲しい。

十八日

透析当番。ICUの透析までついてめっちゃ多忙。病棟の患者さんもあんまり落ち着かないし。
一息つくと一時過ぎ、昼飯代わりのカップラーメン啜っているときにもPHSで呼び出される始末。夕方には救急外来まで少し診て、ようやく落ち着いたときにはぐったり。しばらくネット見て頭休め。

十九日

日直。午前中外来やってる間はまだよかったけれど、昼前に病棟で急変があってからが大変。もうひとり自分の受持患者も病状悪化するし同時多発で早めの対応が必要な事態が発生して。
結局昼飯喰ったのは日直終わってからでしたよ、ええ。カルテ書きとか終わらせたのは晩飯食うにもやや遅いくらいの時間でしたよ(滅)。

急変と伝えて家族に来てもらったのだけれど‥‥気がついたら昔の同級生がいる‥‥。
かなり久しぶりだったんですが、こんなとこで会いたくはなかったなぁとか。まぁ仕方ないか。

二十日

夜、ONEのOAV「風の章」を観る。「雨の章」は視聴ずみ。
ワンセンテンスごとに舞台転換するような描き方で謎めいていて。「推して知れ!」みたいな話の流れ方がONEっぽいなぁとか(爆)。悪くはないと思う。浩平と氷上の区別がいまいちついてないのはわたしのせいということで。
しかし、軽音部でバイオリン弾くわけはないと思うのだが。

二十一日

朝、ごみ出しするつもりで持って出たビニール袋が勤務先についても残っているという不思議。いや単に捨て損ねただけですけど。
しょーがないのでお持ち帰りしましたが。不毛‥‥。

二十二日

いちにち、痙攣を起こす患者の相手をしていた気がする。それもすっきりおさまらないしつこい奴を。
専門じゃないんだけど‥‥それでもなんか「いつも通りに」抗痙攣剤の点滴と内服の指示を書いてて。デジャヴ?(違)

二十三日

第二回葉鍵板最萌トーナメント開催中。最燃トーナメントも同時開催のようで。
わたしとしては鍵、それもONEとAIRしかわからないので何ともいえないですが‥‥。まぁゆっくりROMしてみようかと。

二十四日

仕事をやっとの思いで終わらせて、東京駅から「銀河」に飛び乗る。今回はなんと人生初のA寝台。のぞみの特急券より高い急行&寝台料金を払わされるだけはある(ということにしておく) なにしろ浴衣&スリッパつきである。のぞみにのってもスリッパはついてくるまい、はっはっは‥‥。
なお、当然のことではありますがわたしは鉄ではありません。

二十五日

「銀河」A寝台は進行方向と平行に寝ることになる。B寝台は(以前の記憶だが)進行方向に対し直角にベッドが配置されている。加速・減速のゆれに対しては、直角方向になっていた方が揺れが気にならない気がするのだがどうだろうか?

「1リットルの涙」(原作:木藤亜也/作画:KITA 幻冬舎BIRZ Comics)読了。原作は未読だけれど紺野キタさんが作画という情報で買う。
神経・筋の難病はゆっくりと時間をかけて機能が蝕まれるという特性があって、しかも知的能力に障害が及ばないことも多い。テーマとなっている脊髄小脳変性症(OPCA:多系統萎縮症−MSA−のなかの一病型)も、じわじわと機能が失われていくのをじっと耐えなければならない病気である、現在のところ。
たぶん原作のエピソードをかなり削っているのだろうけれど、雰囲気のある、哀しい中にも前向きな物語と思った。

二十六日

帰路は東京までの行程を新幹線で。帰り道で「聖ジェームズ病院」(久間十義/光文社)を読む。
たぶん臨床研修必修化前、と思って読んだ方がいいのだろう。作中でも言われてるように主人公少し無防備すぎ。でもそこ突っ込むと話自体が成立しないしなあ‥‥まあ創作の嘘ということで。

Medical Specialty Aptitude Test。面白そうなのでやってみた。

  1. med oncology(42)
  2. rheumatology(42)
  3. pulmonology (41)
  4. infectious disease (41)
  5. endocrinology (41)
  6. pathology (41)
  7. radiology (40)
  8. hematology (40)
  9. dermatology (39)
  10. allergy & immunology (39)
  11. radiation oncology (39)
  12. psychiatry (39)
  13. physical med & rehabilitation (39)
  14. neurology (37)
  15. nephrology (37)
  16. cardiology (37)
  17. colon & rectal surgery (36)
  18. nuclear med (36)
  19. neurosurgery (36)
  20. orthopaedic surgery (36)
  21. pediatrics (35)
  22. urology (35)
  23. gastroenterology (35)
  24. general internal med (34)
  25. family practice (34)
  26. preventive med (34)
  27. general surgery (34)
  28. obstetrics/gynecology (34)
  29. occupational med (33)
  30. aerospace med (33)
  31. anesthesiology (33)
  32. ophthalmology (32)
  33. plastic surgery (30)
  34. thoracic surgery (30)
  35. otolaryngology (29)
  36. emergency med (26)

救急医学が最下位で、外科系も下位が多いのはなんとなく納得。ゆっくりじわじわと進める方が性に合う。まぁ点数の差は少ないんですが。
しかし、aerospace medに向いている人ってどんな人?

二十七日

岡山みやげで倉敷銘菓むらすずめを買って留守中お世話になった先生に配ったのだけれど。
同じ科の後輩の先生から「高そうなお菓子ありがとうございます」と礼を言われた。うーん、数を買ってもふところにひびかないって条件でセレクトしたんだけれどな。(笑) やっぱりきびだんごよりは高級感があったらしい。

二十八日

新オーダリングシステム稼働前夜。頼まれたもんで気軽に当直を引き受けたのだけれど‥‥前夜ということは明日から新しい業務体系で業務を動かすということで、そのための準備が前日早いうちにきっちり終わっているほどウチの病院は準備がよくないということを失念していた。
看護師さんたちは普段の倍も残業しながらそれでもなお終わらない明日の業務の準備に呪いの声を上げていたし、救急外来では明日になった瞬間からきっちり新しいオーダーが動くように指示を入れないといけないし。
電子カルテってそこまでして導入しないといけないもんですかという怨嗟の声多数。なかなかのものでした。


Written by Genesis
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