歳時記(diary):四月の項

一日

新人が多数そろう新年度。……でもいい加減中年(ぉになりつつあるところではあまりかわりはなく。
午前中透析当番で午後回診で。だんだん感慨がなくなってきている感じ..。

二日

土曜出勤。すこうし早めに帰れたのだけれど、子どもにつきあって添い寝したらそのまま熟睡...。

三日

日曜日直。午前中外来当番の間はそれなりに来院していたのだけれど、午後になったらぱたりと客足(違)が遠のき。……その方がよかったなんて。

福島原発の状況が気になってちらちら眺めているのだけれど、根本的にはなかなか状態が安定したとは言いにくそうで。かなりのことになってるなぁ。
放射性物質を含んだ水が海に流れ込んでいるってんでふさぐために樹脂やらコンクリやら流し込んでいるというのだけれど、なんで土嚢を素直に積まないのか、ちょっと気になっている。なんか考えがあるのかな。

四日

寝ついたのが日付変わった頃で、丑三つ時に電話が鳴る。受け持ち患者さんが亡くなった由。まあいつ亡くなるか、という感じの方ではあったので驚きはしないのだけれど、一番眠い時間にこういう連絡は来るものだなぁ、と思ったり。

午前外来は少なめの日。
終わって病棟カンファレンスやって医局会議があって。そろそろ総合内科専門医受験のための症例まとめしないといけないんだが.....。

五日

午前中が透析当番、午後は病棟当番。

医局の事務の人(♀)から「"秘密"の九巻貸してください」と頼まれたので、ついでに「復活の地」とか「高杉さん家のおべんとう」なんぞを詰め合わせて貸してみたり。

最近は早く帰ると子どもと一緒に寝てしまうのが通例になっていたりする。

六日

朝から透析診療所の外来当番。なんだか慣れない感じの回診でちょっと疲れた。

終わったあとで病院戻って夜透析の回診。

七日

午後の外来では入院一人。肝膿瘍。先月もそういえばいたなぁ。そんなにちょくちょくいるはずの病気じゃないんだけど(滅)
有病率がおかしいと言われる当院外来....。

八日

午前中透析の外来。午後はカンファレンスで夜は臨床病理検討会。
少しずつめどのついた患者さんが多く、ちょっと気分的には落ち着いてきている。

九日

午前中小雨がぱらつく中、自転車で桜見物。明日はだいぶ散ってそう。

昼過ぎからまた出かけて、DPEだしてエアコンの取り換えについて調べてPHSの機種変更。今はWS0110SHということで高機能型なのだけれども正直メールと電話機能そのものしか使っていない感じであるもので、いっそということでX plateに。
この軽さは割といい、と思うけれども。アンテナ感度にはやや難があるそうなので、ちょっと様子を見てみないとね。

十日

子ども連れて軽くお出かけしてから、夜は当直。
やろうと思っていたほど残務整理は片づかず。ううむ。

十一日

午前外来はかなり混んでいて。月曜日は祝日休みが多いので、その影響を受けてアンバランスが生じやすいのだけれど、それにしてもなぁ。

夜は新人交えての飲み会。けっこう久しぶりに飲んだ。

十二日

午前中の透析も夕方からの透析も処方日でどっちもわたしが回診し。なんだかとっても疲れた....,

十三日

何でも病院上層部が病院周辺の放射線のモニタリングをしようかと考えているらしい。……ガイガーカウンターは軒並み品薄なんだけどなあ。
放射線科の技師と、「ディスプレイ観ながらアナログモニタリング」なんてネタで笑っていた。

十四日

受け持ち患者に御年97歳になられるおばあちゃんがいる。寝たきりで入院中なのだが、桜が見たかったらしくて、同僚が車いすで連れだして桜見物させてくれたらしい。
そういうのは大事だよね、と思う。何歳になっても、季節を感じながら生活できるならばいいのにね。

十五日

医局で雑談していたら、液状化というのは津波をかぶって水浸しになって発生するものだと理解していた方が約一名....原理を説明して差し上げたが。
自然現象に由来して発生するさまざまな災害に対して、それへの基本的な理解が欠けていては十分な対応が出来ないよなぁ、と思ったりする。
わたしが今知りたいことの一つが、平均的日本人(ワカメや昆布を時々食べていてヨード不足ではない)に放射性ヨードを投与したとして、どのくらい甲状腺に取り込まれるのかということ。甲状腺の検査として放射性ヨードを静注で投与することがあるのだが、その検査の前には一週間ほど低ヨード食を食べるように患者指導する。裏を返すと、ヨードを適当にとっている患者はなかなか外部から放射性ヨードが投与されても吸収しない可能性があるのではないかと思っている。その辺調べたデータがどこかに転がっていないだろうかと思っているのだけれど。

十六日

土曜出勤。普段通りに。

十七日

日中メールを読んだら、Kidney-Share MLで「ステロイドパルス療法時に心電図モニター監視が必要か?」とかいうディスカッションが出ていて、夕方当直しに病院行ったらステロイドパルス療法中の方が洞性徐脈を呈していた....なんてシンクロニティ。

十八日

「天冥の標III アウレーリア一統」(小川一水/ハヤカワ文庫)読了。
徐々に一巻・二巻とのつながりが見えてきて、描き出される世界の大きさが予感される感じで。一度一通り読み直してみないとなあ。

十九日

ここのところ積極的には手の打ちようがない患者さんが数人たまっていて。出来るだけマシな方へ舵を切っているけれども行き先はどう考えても暗礁海域、というような。いくつもの疾病の重なった末期状態とか、進行増悪を続ける疾患の終末期なんてそんなものですが。

二十日

朝から診療所の透析回診。普段よりも数が多いので結構大変。
それでも昼食前には回診も終わり、空いた時間で「シアター!2」(有川浩)読了。安定して面白い。"鉄血宰相"春川司が好き。

二十一日

このひと月やたらとACのテレビCMを見かけるということで、あちこちでネタになっている。自分が見つけた範囲で、あいさつするとつうほうされるとか、変形させてみたとか。
まあ、ものには程よい程度、ってのがあるんだろうなってことで。

二十二日

透析の回診やって午後カンファレンスでってやってたら入院患者の診察に全然行けない罠。
そういえば財布の中味も心もとなくなっているのだけれど、ATMに行っている暇がなくて。

二十三日

出勤。薬物多飲患者とか入院してて。
薬多量に飲めば何かが変わると本気で思っていたわけじゃないんだろうと思うけれど、苦しかったんだろうなと。賢くならなければ苦境から脱することは難しいけれど、苦しくなると人は愚かになるものらしいから。

通学路にクレーン車が突っ込んだ事故について、居眠りとか過労とかかかわっていないかと思っていたのだけれど、どうやら持病のてんかんの治療を十分にしていなかったということらしい。
てんかんがあります、と申告してきちんと治療していても職が得られたかどうか、という状況があって、「病気のことを隠し通せれば.....」と思ってしまったのであれば、その思いが人を死なせることになったことに思いをいたして欲しいと思うのだが。嘘をついて得られるものは、嘘をついて失うものより小さいと思うのだがどうだろうか。もっとも、嘘をついたほうが得だと思ってしまえばこそ、人は嘘をつくものだと思うけれど。
同時に、きちんと治療を受けているてんかん患者に対する風評被害が広まらないことを切に願う。

二十四日

だんだん手詰まり感が漂っている福島第一原発。一号機格納容器が事実上の水棺状態なんてニュースが流れて、やっぱり圧力容器は破損していたかと。
ただこのニュースを報じる記事を見ると、余震を受けると危ないんじゃないかとはっきり書いているのは赤旗で、産経毎日読売は「点検すべき」「最終チェック」などあいまいな表現にとどまっている。ただでさえ損傷している圧力容器・格納容器内に重たい水を注入すれば、余震の際地震でかかる加速に対してより大きな力がかかって破損を促進するように思えるのだが。
他にも東電が政府に基礎データをきちんと提出してない問題もあまり報道されてはいないようで。令状とって押収しろよとかちらっと思うんですがそれは最後の処置として。報道ぶりにも違和感を抱くこと多数。

二十五日

午前外来は遅く始めてその前に入院透析室の対応をする。大急ぎで外来やって、病棟の患者さん対応したら透析診療所へ移動して夜間透析当番。
月に一度のルーティンワークですが何か。

二十六日

夜は透析室の新人歓迎宴会。二次会が終わる頃にはつぶれている奴数名...。

二十七日

午前中透析診療所の外来、午後から病院へ取って返して病棟患者みて夜透析みて。

某仕事熱心で口の悪い先輩Drが「サイババだけは信じてたんだけどなぁ」などと仰る。各種奇蹟の行いはタネくらいありそうであやしげと思うので、どこまで信じてよいのやらと思ったり。

二十八日

外来に定期的に来ている人。状態は安定しているのでいつもの受診と思いきや、「調子悪い」と看護師さんの問診に。「どうしました」と尋ねたら「妻が急死しまして.....」と。その方も70過ぎ。そういったことがあってもおかしくない年齢ではあるのだけれども、起きてしまえばショックは大きいだろうとお悔やみ申し上げた。
食事摂れなくて眠れないと、ある意味ではそのくらいはごく普通の反応かもしれない。抗うつ剤処方も考えたが、少し持ち上がりかけている感じとのことで、まずは軽い安定剤から。自力で気持ちの整理がつくのであればその方がいいだろうと思う。
夫婦は大体80パ-セントの確率で男性の方が先に死亡するそうで、わたしの実感としても未亡人の患者さんの方が多い感じがする。やがては自分の身の回りに降りかかるさだめとは思っておいたほうがいいのだろうが。

二十九日

日経解剖専門機関を各都道府県にとの記事があったと小熊さんが書いていたので感想を。
わたしは、救急外来に来院時心肺停止で来た方でそのまま死亡確認した方については、日本法医学会の異状死ガイドラインに示す「基本的には、病気になり診療をうけつつ、診断されているその病気で死亡することが「ふつうの死」であり、これ以外は異状死と考えられる。」という精神にのっとって、全例を医師法21条にいう異状死体として届け出を行っている。当院でがんなど死に至る病が確認されている場合についてはその限りではないが、そういった人の急死は少ないのが現状だと思う。
で、警察の対応をみていると、病死だろうと思うとあまりそれ以上突っ込んでいないのが現状であろうと思っている。医者としては、むしろ病死の場合に病理解剖を行って死因を確認したいと思うのだけれど、これに同意される人はあまり多くない。かくして救急外来で死亡確認された多くの患者さんは、「多分風呂に入っているときに心筋梗塞か何か起こして突然死したんじゃないか、なんの証拠もないけど」程度の診断で死亡診断がされている。それを改めるべく、解剖の対象者を増やすというのはよいことだとは思う。
でもねぇ、これを警察主導でやろうとするとこんがらがる気がする。まず、警察官は医学や病気に対して全く専門知識を持たない。ときどき「自宅で亡くなっているのが見つかったので病状を尋ねたいのですが....」って警察から電話がかかってくるのだが、説明していると非常にわかってもらいにくい。気分は家族への病状説明という感じ。現在も警察が事件性ありと判断すれば司法解剖へ廻せるわけだが、そこがそれほど機能していない現状、警察を鍛えれば死因不明が減るとは思いにくい。
もう一つ、警察は犯罪捜査を主眼に考えがちで、犯罪ではないが原因不詳な死亡とか、公衆衛生上死因を確定する意義があるとかではあまり積極的に動かないのではないかという懸念がある。警察の捜査が「公訴を提起するため」であるという考え方からいえば致し方ないのかもしれないが、まさにこの検討会が「犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の在り方に関する研究会」であって、犯罪死ではないことが明らかな死因については手を出す気がないと公言しているような感じで、死因をまずはっきりさせたいと思うわたしからは違和感が大きい。
あと、解剖を増やそうとすると医者が足りないんだよね(炸裂) 法医学領域に進もうという医師は非常に少なくて、現在でも依頼される解剖の数はかなりのもの。医者増やしを先にしないとまず現場が回らなくなると思いますな。

三十日

相方がお風邪。やかましいガキどもをつれて放牧お散歩。公園に放してみるとひたすら駆けずり回って遊んでいる。その間に「神様のメモ帳2」を読了。


Written by Genesis
感想等は、掲示板[email protected]まで。リンクはご自由に。

日記のトップへ
ホームページへ