正面はすべてガラス張りで外には緑の芝生と青い空と青い海。 絵に描いたようとはまさにこのことで、風景までもが設計されたかのようで美しいことは確かなのだがいささか信じがたい思いがした。信じがたいといえば白いドレスで私の傍らに立つ彼女の存在もまたそうだ。幼かった頃の記憶が薄れる暇もないのに、彼女はもう私の掌の中から飛び立とうとしている。 式自体はシンプルで機能的な処が、つまりはこれが「二人の契約」のための儀式であり、参列する私達はその契約を承認するための見届け人なのだと、改めてその意味を知らされたような気がした。 延々と続く写真撮影が気苦労だが、二人のために用意されたものに私が文句をいう筋合いはない。美しい笑顔と少しの涙。この日の彼女が見せた笑顔が私の目的の全てだ。幸せであってほしい。 「幸せの形は、一様に似ている」とロシアの作家も言っている。私達の想像力は貧困で、形として示すことは難しいのだが「今が幸せなのだ」と私達が感じる瞬間、幸せの記憶が幸せというものなのかもしれない。 こんな日にありきたりの感想しか書けないのが、つまりは幸せと言うものの正体なのかも。 |
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