きっと二人ともそうなると決めていたはずなのに、あの日僕たちはためらってためらって、何度も同じ道を行き来した。それはひとえに僕の臆病さのせいだった。必要もないのに遠回りして、まるで中学生の初めてのデートみたいで我ながら愚かしい。 きっと結末はお互いに分かっていたからこその遠回りであり、その後のせわしなくお互いを求めてしまうあまりの大胆な行動こそが、実は二人のこの後の『予感』の正体だったのだろう。 でも、僕たちにはこれ以外にお互いを確かめるすべがなかった。 車を停める。疲労からか眠気からか、彼女の返事は不確かで少し心配になる。名前を呼ぶといきなり両手で僕の首に腕を回してきた。僕は彼女を抱きしめ、そして彼女を探る。彼女が深く潤っているのがわかる。その潤いに沿って僕は満たされ彼女を満たしていく。 それまでのためらいの反動からか、僕は大胆になり積極的になり、彼女の声を耳もとで聴きながら激しく息を乱した。 夜はとっくに明けていた。 それが僕の記憶なのかはたして妄想なのか、自分自身でもよく分からなかったりします。 |
胸の前で小さく手を振る彼女の姿を何度バックミラー越しに見たことだろう。儚げで不安そうで寂しそうな彼女の姿が小さくなるのを見返しながら、僕は無言で人気のない道路を走る。 もう一度、折り返して彼女のもとへ戻ろうとして何度も断念した。際限のない繰り返しでしかない事を最初から察知していたからだ。答えのないことを知りながら、怒ったり、無理に答えを見つけようとしたり、あきらめようとしたり・・・結局最期は疲れ果てて道を行く。 街灯の少ない高速道路を何も考えられず、ひたすらに走る。ヘッドライトに照らされた標識によって彼女から少しずつ遠ざかっていくことを僕は知らされるのだ。 日常から離れてまた日常に戻っていく。離れていくものも近づくものも、どちらをも手放せない優柔不断な僕は引き裂かれていくものを、どうしようもなくもて余していた。 |
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