合唱団たちばな

第3回 演奏会


1981年11月14日に行なった「第3回演奏会」のプログラムを紹介します。

ごあいさつ
 本日はお忙しいところ、合唱団たちばな第3回演奏会おいでいただき、まことにありがとうございます。
 合唱団たちばなはまだ結成以来3年半という若い合唱団です。発足当初は団員は十人程度、練習場所も一定しないという中でほそぼそと活動してまいりました。一昨年秋、事態の打開策に決行しました第1回演奏会は、予想以上の成功をおさめ、以後団員数も大幅に増え、団の活動も軌道にのり、昨年秋には第2回演奏会と実績を重ねる中で着実に発展し続け、現在では団員数50名を数える合唱団となり、今日第3回目の演奏会を開催するに至ったのは皆様の陰に陽にの暖かい声援のおかげです。ここにあらためて感謝の意を表すと同時に今後もより一層の御指導をお願い致します。
 ところで、一人一人はみな顔が違い、その考え方も違います。しかし歌っているときの心は一つ − 各人の個性を大切にしながらも、それを大きな一つのコーラスの輪の中に包み、さらにその輪を拡げていきたい − そういう願いを持って、私たちは今日まで練習を重ねてまいりました。歌と仲間を愛することを私たちは最も誇りとしています。本日の演奏で、その一端でも感じていただければ幸いに思います。
 それでは未熟ではありますが、私たちのこれまでの練習の成果を最後までごゆっくりとお聴きください。
 最後になりましたが、本日の演奏会にあたり御尽力いただきました皆様方には心よりお礼を申し上げます。
団 員 一 同


プログラム
■第1部
混声合唱による五つのセレナーデ 心のモザイク
1.私は風に名前をつける
2.夏のプロローグ
3.屋根うらの九月
4.木枯しのアリア
5.クルック・ムック・ルップル
作 詩
作 曲
指 揮
ピアノ
若谷 和子
湯山  昭
松島  豊
米良 賀代
■第2部
G.フォーレ合唱曲
1.パヴァーヌ
2.マドリガル
3.ラシーヌ頌歌
作 曲
指 揮
ピアノ
G.フォーレ
岡本 俊久
米良 賀代
■第3部
混声合唱曲 嫁ぐ娘に
1.嫁ぐ日は近づき
2.あなたの生まれたのは
3.戦 い の 日 日
4.時間はきらきらと
5.か ど で
作 詩
作 曲
指 揮
高田 敏子
三善  晃
岡本 俊久
■第4部
コマーシャル・ソング集 ショッピングはデパートで
 きょうは日曜日。おしゃれなママと、たよりないパパと、
くいしんぼの坊やが、デパートにやってきました。
ママは化粧品に血まなこ、坊やのおなかは底なし、
パパはさいふの中身を気にしてうろたえるばかり……。
 あまりにも現代的な家族の、日常的すぎるがゆえに
日常気付かれることのない真実を、きょうはコマーシャル
という虚像を通して眺めてみましょう。
企画・構成
編   曲
指   揮
ピ ア ノ
岩田 信夫
金川 明裕
岡本 俊久
米良 賀代



曲目紹介
心のモザイク
 この曲は、湯山昭が、伏見混声合唱団の創立20周年記念委嘱作品として、1971年の4月から5月にかけて新しく書きおろした混声合唱組曲である。当時作曲者は水の都ヴェニスのサンマルコ寺院にいたのだが、華麗なモザイクを目の前にしたとき、“消えてはうかぶさまざまな想い、それが心のモザイク…”という詩人若谷和子の印象的な言葉が胸の中を走り抜けていったという。
 曲は、五篇の詩が、現代の爽やかなリズムと情感にのって春から春へという循環する構成でまとめられている。
(芳賀)

G.フォーレ合唱曲
 ガブリエル・フォーレ(1845〜1924)は、幾つかの合唱曲を書いているが、それらは宗教曲と世俗曲に大別される。今回取り上げるものは、全て後者に属するものである。
 「ラシーヌ頌歌」は、この中では最も宗教色に満ち、17世紀フランスの作家、ジャン・ラシーヌの「宗教的讃歌」からの詩をテクストとしており、敬虔なカトリック信者であったフォーレを彷彿とさせる。
 「パヴァーヌ」は本来、管弦楽と合唱の編成であるが、管弦楽のみで演奏されることも多い。詩の内容は、王宮の恋を歌ったもので、また「マドリガル」は田園の牧歌的な恋を歌ったものである。いずれもフォーレ独特の曲想と相まって、軽やかに歌われている。
(石川)

嫁 ぐ 娘 に
 1962年、ABC朝日放送委嘱、指揮田中信昭、東京混声合唱団により放送初演された曲である。
 この曲が生まれるにあたり、作詩者高田は娘の結婚を間近にひかえ、作曲者三善は妹が嫁いだばかりであった、という背景がある

第1曲 やわらかなAlt.の旋律とそれにからみ合うMez.Sop.の女声合唱に始まる。Sop.が参加して“嫁ぐ日は近づき”と歌う。男声がAllegroで引きつぐがこれは速度記号というより軽快にという曲想であり、結婚を間近にした娘の歓びにはずむ心を現わす、それを象徴するものは指輪であり、未来へ導く新しい星である。そしてその星こそはかつて母にも現われ導いて来た星である、母は今、過ぎし日の思い出の中に誘われる。Alt.は最初の旋律5度上でくり返しきえてゆく。
第2曲 母の思い出は娘の生まれた時にさかのぼる。夢見るような女声2部とささやく男声に導かれ、Sop.が“北の国の”と歌い出す。母はやさしく娘に出生の時を語る。Mez.Sop.のSoloが不安と緊迫をもって“わたしはおののき”と歌うとTen.とBas.がその音型を不安気にくり返すがそれに続くBas.によって解決されAlt.の歌うカデンツはすべての物事の明るい希望への帰結を示している。苦しみは過ぎ去り、暗い夜はあけ、吹雪はしずまり、そして娘よ、あなたは生まれていた…。
第3曲 他の4曲と異なり女声の悲痛な叫びに始まる。“世界中の…”とBar.Soloが物語る。そして全員で“やめて”とくり返した後Allegroに変り、戦いの日々はどうであったか、母と子は、人々はどうであったかをたたきつけるように歌う、そして始めのTempoに戻り、Bas.が思い出したかのように“そうだ”とつぶやく。Ten.がくり返す。Sop.に始めの言葉“世界中の”が現われ今度は前線の兵士達が歌われる。女声が印象的に“兵たちはみんなつぶやいていた…”と歌う。続く女声の効果的なハミングの中からBas.Soloが印象的に“おれの手は…”と歌い始める。SoloはBar.Ten.と歌い継がれる。女声はSoloを和音で支える。やがて“いつまでも夜明けは来なかった”と闇の中にきえてゆく。
第4曲 第3曲の悲痛な叫びを追いはらうように明るく、幸福に輝いた曲である。きらきらと時間は流れ、母と子のまわりにたわむれ、ふんすいは歌い、サルビアは燃え、若妻のまわりにもたわむれ、すべてが明るく輝かしく、歓びに満ちあふれた曲。母の楽しい回想であり、娘にもかくあれかしと祈る祝福の歌である。
第5曲 新しい星は母を過ぎてきた月日へと誘った。走馬燈のようによみがえり、ささやきかける思い出…。娘よ、あなたの幼き頃は…。そして今、その星は娘を美しい未来の方へ導いてゆこうとしている。“あすのよそおいの娘よ、さようなら…”。作詩者である母と作曲者である兄、あるいは父はあふれる愛と祝福を嫁ぎゆく娘のために祈る。合唱はその心を“そのほほえみを むすめよ やさしいひとみ 愛のこころを”と高らかに歌い、そしておそらく、あふれる涙の中でつぶやく“いつの日にもわすれることなく…”
(山際)



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