合唱団たちばな

第14回 演奏会


2000年10月7日に行なった「第14回演奏会」のプログラムを紹介します。

ごあいさつ
 本日はご来場いただき、まことにありがとうございます。
 合唱団“たちばな”の今回の定期(?)演奏会はミレニアム演奏家と銘打ち20世紀を偲ぶことに致しました。発足より22年、14回もの演奏会を開くことができましたことに今日ご来場のみなさまに感謝する次第です。それではごゆっくりお楽しみください。


♪♪♪ プログラム ♪♪♪
  1. 混声合唱組曲「方舟
    作 詩  大岡  信
    作 曲  木下 牧子
    指 揮  岡本 俊久
    ピアノ  斉木美紀子

  2. 混声合唱曲「岬の墓
    作 詩  堀田 善衛
    作 曲  團 伊玖磨
    指 揮  秋吉  亮
    ピアノ  斉木美紀子

  3. 混声合唱とピアノのための「三つの優しき歌
    作 詩  立原 道造
    作 曲  新実 徳英
    指 揮  岡本 俊久
    ピアノ  斉木美紀子

  4. 哀愁の一発屋」〜 あの歌手はいま何処に 〜
    編 曲  金川 明裕
    指 揮  岡本 俊久
    ピアノ  斉木美紀子



曲目紹介
方舟
 身の回りの様々なものが、社会が、世界が、そして自分自身までもが、正義、愛、平和といった、自分の理想や普遍的な価値、かけがいのないものを裏切っていると感じて、嘆きつつ、どこかにそれらを求め、同時に得難いものであることは知っていて、それでもその現実から何とか逃れたいと思う・・・。
 そんな「青臭い」「切実な」「甘えた」「純粋な」気持ちは、むしろ大人の持ち物なのかもしれない。なぜなら子供のころには、正しいもの、美しいものがいつかは実現すると盲目的に信じていたため、それほど苦しくなかったのだから。
 生きるために少しずつ中身を喪失して空っぽになってしまった。そんな「木馬」が空をさまよい救いの手を求めている。現実の生活から離れ「水底」「海辺」といった、優しげな世界に逃げ込もうとし、高い理想そのものである「方舟」を見上げ、絶望を前提にあこがれ、涙している。
 この曲が非常に若々しい旋律に彩られているのを裏切って、詞には、そんな成熟した、甘美な悲壮感があふれているように、私には思えてならない。
(秦 伸介 記)


岬の墓
 白い墓の下に仄暗く存在する過去、青くひろがる海−現在に漂う舟で象徴される我々自身、自己、そして、水平線の彼方に光る未来。人間の心の中にバランスを構成するこの四つの支点を骨格として、人生の姿を、永遠に解き難い人生の謎を、絶対の真理ー赤い花ーに問いかける。  作詩は堀田善衛、作曲は團伊玖磨、初演は木下保指揮、CBC合唱団。芸術祭合唱部門に参加し1963年の芸術祭賞、文部大臣賞を受けた。(以上作曲者による解説)
 もう23年も前のことになりますが、私がこの「岬の墓」を初めて指揮したとき、この曲の良さは歳を取ってからの方がよくわかるのではないか、40歳ぐらいになったらもう一度指揮してみたい、などと感じたことを憶えております。そのときから自分がどのぐらい歳を取ったのか、あるいは自分がどのように歳を取ったのか、が今日の演奏から見えてしまうかもしれません。楽譜に記されている表情の付け方や作曲者・初演指揮者の解説に従うと「岬の墓」は力強く歌い上げる曲なのですが、今日は少し変えて、繊細に演奏してみます。請うご期待。
(秋吉 亮 記)


三つの優しき歌
 作詩は立原道造、作曲は新実徳英。岸信介「舫(もやい)の会」の委嘱で作られた作品である。
 この曲は作曲者の頭の中にまず第一曲の最初のメロディーがあって、様々な詩集をながめるうちに「あ、立原だ」と閃き、その詩集「優しき歌」の<爽やかな五月に>と結びついてうまれた作品であるという。作者は二十代のころ親しんだ詩とメロディーがピタリと嵌ったことを天の啓示と感じ、残る二曲も「優しき歌」から選んでつくりこの作品となった。
 <莢かな五月に> かがやかしさ、美しさ、優しさをたたえながら言えなかった言葉…「私は おまへを 愛してゐる…」「おまへは 私を 愛してゐるか…」その言えなかった思いを美しいメロディーにのせてどこまで伝えられるでしょうか。
 <落葉林で> つねに「いのち」と向き合って詩作をしてきた立原。「私らの 短いいのちが/どれだけ ねたましく おもへるだらう…」その言葉を孤独の旋律で浮かび上がらせた新実。作詩者、作曲者の思いをどこまで歌い上げることができるか。
 <夢みたものは……> 山の中の静かでのどかな村で田舎の娘らが踊っている。側で小鳥も歌っている。「夢みたものは ひとつの愛/ねがつたものは ひとつの幸福…」そのすべてがこの曲の風景にある。時代が変わっても失いたくない夢への思いを伝えます。
(細井則子 記)


哀愁の一発屋
 恒例の「たちばな」第4ステージ、今回は「哀愁の一発屋」と題して、当時は誰もが口ずさんだ歌、大ヒットした歌なんだけど、そういえばあの歌を歌った人は誰だっけ、どこへいったの、という曲を特集してみました。十数曲の候補のなかから編曲者選んだ曲はなぜか意味深長な歌ばかり。
<前奏曲 バッハは飛んだか回ったか> この曲だけは「たちばな」のオリジナルアレンジです。4ステへのプレリュードとしてちょっと遊んでみました。
<昭和枯れすすき> 「さくらと一郎」の大ヒット曲。しかしこれをステージの冒頭で歌う合唱団も珍しいかも。
<大阪で生まれた女 または 遠い日の歌> 良くありがちではありますが、おしゃれなアレンジを楽しんでいただきます。
<恋に落ちて−Fall in love−> 「金妻」、はやりましたねぇ。改めて詞を読み返すと、ずいぶん過激なことを歌っていたんですね。
<ウェディング・ベル> 過激といえばこの歌はもっと過激。うっかり聞き過ごしていたけれど、すごいこと言ってたんですね。
<氷雨> 過激さが自分に跳ね返って「氷雨」。金川先生、いったい何考えて編曲してるの?
<大都会> さあ、うっぷんを晴らして歌い上げましょう。「ああ/いつの日か/大空かけめぐる…」


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