合唱団たちばな

第15回 演奏会


2003年5月31日に行なった「第15回演奏会」のプログラムを紹介します。

ごあいさつ
 本日は合唱団「たちばな」第15回演奏会においでいただき、ありがとうございます。「たちばな」は今からちょうど25年前に、学生を中心としたメンバーで創設されました。以来14回の演奏会に数多くのお客様においでいただき、それが団員の「演奏したい」「伝えたい」という情熱の支えでした。その支えのおかげで多くの山や谷を超えて25周年を迎える事ができたものと、団員一同感謝の気持ちで一杯です。
 そして今夜、新たな25年に向けて第一歩を踏み出します。最後までごゆっくりとお聴きください。


♪♪♪ プログラム ♪♪♪
1st Stage …… 混声合唱曲集『光と風をつれて』
 T いっしょに
 U 秋のまんなかで
 V 雨
 W あいたくて
 X はじまり
作 曲
作 詩
指 揮
ピアノ
木下 牧子
工藤 直子
岡本 俊久
米良 賀代
2nd Stage …… 混声合唱曲『嫁ぐ娘に』
 T 嫁ぐ日は近づき
 U あなたの生まれたのは
 V 戦いの日日
 W 時間はきらきらと
 X かどで
作 曲
作 詩
指 揮
三善  晃
高田 敏子
秋吉  亮
3rd Stage …… 混声合唱とピアノのための『四つの優しき歌』
 T 序の歌
 U さびしき野辺
 V 樹木の影に
 W 朝に
作 曲
作 詩
指 揮
ピアノ
鈴木 輝昭
立原 道造
岡本 俊久
米良 賀代
4th Stage …… 陽水の世界 ―オ元気デスカ〜…ようするに「ヨウスイ!」―
 T 心もよう
 U 長い坂の絵のフレーム
 V カナリア
 W いっそセレナーデ
 X 夏の終りのハーモニー
 Y ありがとう
編 曲
指 揮
ピアノ
金川 明裕
岡本 俊久
米良 賀代



曲目紹介
光と風をつれて
 「工藤直子さんの詩はどれもシンプルで品があり、そのあたたかさが深く心にしみてくるものばかり。」と語る木下牧子の美しい曲に酔いしれながらも、彼女の豊かな感性を歌い上げる難しさは、コンクールで多く歌われているから、という理由に限りません。無伴奏の『いっしょに』は、ゆったりとした「癒し」の曲なのに、中年の下手な誘いの曲になったり、けだるい秋の『雨』を、ただの長雨にしてしまったり・・・ということのないように心しなければ。『あいたくて』は、中高生が歌えば、まだ見ぬ将来の恋人や大切な人に向けた心のように初々しいけれど、大人なら、人生で受け取り受け渡さなければならない何かを今も手探りしているような。よく歌われる『はじまり』でこの曲集の'終わり'を飾らねばならない奮闘に免じて、聴衆の皆様も美しいこの曲集を、心からゆったりとお楽しみくださいますように。
(加藤ゆみ子 記)


嫁ぐ娘に
 この詩の中には、「ささやか」なのに大事なものがたくさん詰まっています。麦を育て、子供の体を洗い、妻の黒髪を愛する夫の手。また、「たわむれ遊ぶ母と子」、「よりそう恋人たち」、オムレツを作れるまでに成長した娘、そういったものが母、親、そして家族にとって、実は何よりも大切な瞬間であるということに気づかせてくれます。さらに、それを奪う権利は誰にも無いのだということを、改めて実感します。
 この曲は、娘の結婚を間近に控えた詩人と、嫁いだばかりの妹を思う若い作曲家が、それぞれに戦火を耐えてきた経験をベースに、それら「ささやかなもの」の尊さを祝婚歌に託したものです。初演は昭和37年で既に41年を経ていますが、その音色は少しも錆付かず、詩は時代の変化に従って、むしろ意味を深めつつあります。それは、この詩・曲が、母としての感傷を表すことに終始せず、次の時代を担う新しい家族への期待、平和への希望と祈りを強く打ち出したものであるからこそだと思います。
 たちばなでは約20年ぶりの再演となる「嫁ぐ娘に」も、今の私たちにとっての新しく意味深い演奏となるよう頑張ります。ご期待ください。
(秦 伸介 記)


四つの優しき歌
 この曲のコアになっているのは、やはり立原道造の詩そのものです。私が青春時代に読んだ時には、これらの詩の意味するところがさっぱり分かりませんでした。ところが、青春という魔法が解けてしまった今、改めて読み返してみると、この一語一句が「青春という魔法」そのものであり、音読すればそれが、手に取るように浮かび上がってくることが、分かってきます。
 それに加えて、この鈴木輝昭さんの和音です。歌ってみると、この方は器楽(それも室内楽)により向いていらっしゃるのではないかと思いますが、この微妙なハーモニーこそが、鈴木さんなりの「青春という魔法」の表現なのでしょう。すでに魔法が解けてしまった我々には、(いわば音楽の)ルービックキューブを楽しめる心の余裕がないと、少し荷の重い物でありました。
 さて、本番どれだけ「青春という魔法」そのものを楽しんでいるか、我々をとくとご覧ください。そして、この魔法の時間を共有できれば…と思っています。
(石川 泰志 記)


陽水の世界 ―オ元気デスカ〜…ようするに「ヨウスイ!」―
 陽水の曲、と言われてあなたは何を思い出しますか。「心もよう」、「夢の中で」(ともに1973年)が浮かんだ人、「たちばな」にも同世代が沢山います。陽水が吉田拓郎、小室等、泉谷しげると「フォーライフ」を立ち上げたこの頃はフォーク、ニューミュージックの全盛期でした。80年代の名作と言えば、「いっそセレナーデ」、玉置浩二とのデュオ「夏の終わりのハーモニー」、「長い坂の絵のフレーム」などでしょうか。「カナリヤ」を挙げるのは、かなり通の人ですね。いずれも切なさや、心の葛藤を、独特なメロディーラインでさらりと歌っています。若い人達に印象があるのは、奥田民生とのデュオ「ありがとう」でしょう。時代に敏感な陽水ならではの一曲です。たちばなから皆様への感謝を込めて贈ります。
 皆様は、これらの曲に、忘れていた思い出や、懐かしさを感じるでしょうか。それとも元気が湧いてくるでしょうか。ひとときの「陽水の世界」をお楽しみください。


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