合唱団たちばな

第１９回　演奏会

混声合唱組曲 「心の四季」

　昭和42年度芸術祭参加作品、NHK名古屋中央放送局からの委嘱作品とのこと。
初演から50年近く経った今でも、多くの合唱団が演奏会のプログラムに載せている。
第1曲「風が」、たった５分弱の曲に四季の移ろいを見事に表現した名作である。
第2曲「みずすまし」、たかが（？）「みずすまし」をこれほど哲学的に表現したのは、作詞家吉野弘の真骨頂であろう。そして、第3曲「流れ」、第4曲「山が」、第5曲「愛そして風」と曲想のまったく異なる曲が続き、クライマックスの第6曲「雪の日に」へなだれ込む。第1曲の「冬」の部分と見事に呼応している。
そして、余韻のような第7曲「真昼の星」へ。最後の音の響きが消えるまで息をひそめて下さい。

（櫻井義人）

混声合唱とピアノのための 「信じる」

第3曲「泣けばいい」について
　「泣けばいいんだ」としらふで言う人は少ないだろう。おそらくほろ酔い気分で、しかし語りかけている相手は目の前にはおらず、遠くにいるのだろうか。あるいは自分自身に言い聞かせているのかもしれないが、「泣けば、菜の花、涙にゆれる〜」と、ことば遊びも忘れていない。
　最後の部分「泣きたいときは泣けばいい　まぶたはらして鏡を見れば　いつか笑いがこみあげる」について補足しよう。作曲者は「いつか笑いが」の直後の休符にアドリブとしてフェルマータを付けている。確かに、泣くことでかえって前に進めるようになるかもしれないし、フェルマータはそのような「効果」を強調するだろう。しかし作曲者は、このフェルマータを、しても、しなくても良いものとし、演奏者に選択をゆだねた。
　私は今日の演奏で、このフェルマータをしない。「効果」に関わりなく、「詩」には価値があるからだ。

（秋吉　亮）

寺山修司の詩による６つのうた 「思い出すために」

　信長貴富さんは、日本の合唱界において現在最も人気のある作曲家の一人です。この曲集は、寺山修司の六篇の詩に作曲されたものです。
　寺山修司は、演劇実験室「天井桟敷」を組織して、日本の演劇界に一大旋風を巻き起こした劇作家ですが、多くの詩や歌も残しています。
寺山詩に潜む深い孤独と悲しみ、そこから垣間見える一筋の希望と普遍の愛が、印象深い旋律と和声によってつづられていきます。表題となる第五曲は、鮮烈なピアノ伴奏によるジャズともいえる作品です。｢思い出すために忘れてしまいたい｣なんて、何とロマンチックなんでしょう…
全曲を通して、この曲集の持つ澄明な情感と、密やかだけれど熱い思いを表現できたらと思います。

（西方祥子）

ブラブラアニメ

　合唱団たちばな は今年35周年を迎えました。創立当初大学生だった団員も50代に突入しました。思い起こせば、1979年秋に行なわれた第1回の演奏会でアニメ主題歌集をやって以来、たちばな の演奏会には最後にポップなステージをやるというのが伝統？になりました。
　初回演奏会でも歌った『鉄腕アトム』で幕開けです。男声合唱で送る『あしたのジョー』は、ちばてつや作のボクシングアニメでした。女声合唱で送る『キューティーハニー』は1973年に放映されたアニメのオープニングテーマで、2004年に実写映画化された際、倖田來未がカバーしてセクシーダンスとともに有名になりました。
　映画アニメといえば、宮崎駿。信長貴富編曲の混声合唱のための『宮崎駿アニメ映画音楽集』から第２集をお送りします。さんぽ〜いつも何度でも〜めぐる季節〜やさしさに包まれたなら　それぞれの時代をふりかえりながら楽しんでいただけたら幸いです。

（細井則子）