混声合唱組曲「幻の村」は、1984年に“陸の陰画”というタイトルで、日本フィルハーモニー協会合唱団により初演された。
その後、作曲家により手を加えられ、今回は改題改定販の初演ということになる。
T「幻の村」は何処にあるとも知れない理想郷、すなわち平和で完成された理想的な世界への憧憬。村祭のリズムと素朴な旋律。
U「譚(はなし)」は時間と空間を超越したイメージの拡がり、野性的な力強い響きから幻想的な深い音まで。
V「見る」は、人間の貪欲なほどの見る(=知る)ことへの欲求、同じ見るという行動にもかかわらず、何を見るかによって変わる人間の感情の不思議、そしてふとした瞬間に自分自身を突きつけられてしまう恐怖。
W「海」は、文化と文明の淵源、生活の糧と希望、数々の影響を人間に与えながら、太古の昔からそれ自体は変わらず、陸上の生活を生みだしてゆく“陸の陰画”。その懐の深さ、温かさを表現する豊なひびき。
以上、簡単に曲目をご紹介いたしました。多彩なイメージを抱かせるこの詩と旋律に、皆さんは何をお感じになるでしょうか。
(岡本 俊久)