メサイアの楽しさは、聴いていただければ伝わると思います。ここでは、楽しさ以外のことを中心に書きたいと思います。
Novello社版のメサイアの楽譜では、序曲の直前のページに、標記“MAJORA CANAMUS”という言葉が載っています。これはメサイアの初演(1742年)のプログラムの表紙に、メサイアの台本を書いたジェネンズが載せたもので、詩人ウェルギリウスの「牧歌」(紀元前39~37年頃刊行)の第4歌の冒頭の言葉です。この「牧歌」第4歌は、幼子による平和の到来を謳っており、イエス誕生の最後の予言ともされています。
【第一部】 1番~18番
1番:序曲。何か新しいことの始まりを予感させます。
2番~10番:メシアへの待望
11番:生まれました!
12番~15番:ルカによる福音書に描かれているイエスの降誕物語
16番~18番:イエスと私たち
18番で第一部が軽やかで明るく締めくくられるのですが、17番と18番に“His yoke”(彼の軛(くびき))という重い言葉が出てきます。「神への奉仕」のこととする解釈もありますが、私は「神が負ってくださる私たちの重荷」のことと思って歌っています。
【第二部】 19番~39番
19番~30番:イエスの受難と復活
20番は大変印象的なダ・カーポ アリアです。中間部では打とうとする者に背中を差し出すイエスの姿が、激しい伴奏と共に歌われます。23番の合唱は、明るい長調で書かれていて、楽しい曲のようにも聞こえますが、16分音符の連続などは、私たちが神に従うことができずにさまよっている様子を感じさせます。また25番の合唱は、十字架に付けられたイエスを、ユダヤ人たちがるセリフです。
31番の前のレチタティーヴォ~39番:イエスの昇天と福音の拡がり
37番の合唱は、この世の王や君主が神に逆らって言うセリフです。神に逆らう人たちにとっては、神の福音は枷(かせ)であり、壊したい、投げ捨てたいものなのでしょう。
続く38番で、神に逆らう者たちは鉄ので打ち砕かれ、39番の有名なハレルヤコーラスへと続きます。
【第三部】 40番~47番
40番~45番:死者の復活と永遠の命
42番と43番に出てくるラッパは、最後の審判の日に鳴らされ、このとき神によって死者には永遠の命が与えられる、とされています。
46番47番:神への信頼と祈り
最後は「アーメン」という言葉だけの、88小節もの長大なフーガで、メサイア全曲が締めくくられます。
曲の番号等はベーレンライター社の楽譜に従った。
東京オラトリエンコール団内指揮者 秋吉 亮