歳時記:壱月の項

一日

少し早起きして、初詣もせずに列車に乗る。母親の実家の岩手まで。開通したばかりの新幹線はやて号に乗った。
車中では「エイリアンストリート」(成田美名子/花とゆめコミックス)を読みふける。翼ちゃんかわいい〜(爆)。「アレキサンドライト」「サイファ」とも、主役の男性陣が美形なのでいまいち感情移入しづらかったのだけれど、この作品ではジェラールなんかがお気に入りだったりする。中盤から出て来るおじさま陣(ジェルパパ・シャールパパ・ヘミングス監督)も面白い。

到着した後叔父に迎えにきてもらう。初め東口で待っていたのだが、西口の方が開発が進んで、いまや中心はそちらになりつつある由。かなり冷え込んでいて、雪の積もった道をたどって帰った。
着くと昼時で、食事をいただいた後、初詣。新山神社と九戸神社へ。
九戸神社には最後の戦国武将とも言える九戸政実を祀る政実神社があり、地元の英雄として信仰も厚いようだった。
ちなみに、岩手県の城のページから九戸神社近くの大名館と、新山神社近くの江刺家館の概略がわかる。

夜は牛舎へ。小学校以来何度も母方の実家にはきていて、その度牛舎で作業の手伝いをしている。何とは無しにここで仕事をしないと来た甲斐がないような感じがしているくらい。
んで、敷きわら代えをしたりしていた。

二日

厳寒。目を覚ましてストーブをつけても、部屋の中で吐く息が白い。まぁ断熱性の悪さという問題はあるのだが。
この日は午前中だらだらした後、午後にボウリングに従弟や叔父らと行く。4連続ストライクなどという派手なものをやらかして、170代の得点を稼いでみたりする。めったにないことではある。

三日

帰りの新幹線の座席を取っておいたのだが、それが午前中の列車ということで、別れを告げて早々に出発。──けれども乗り遅れ。(爆死)
はやては全席指定で、それが売り切れたら立ち乗りするしかない。やむなく次の列車のデッキに陣取って荷物に腰掛け、東京までの約三時間を過ごす。その間に「銀河冒険記」(岡本賢一/ソノラマ文庫)を一通り読了。以前読了しているのだけれど、間をあけて読んだので全体のつながりがつかみづらくて、再挑戦。
登場人物が少しずつクロスしていて、通して読むと「あ、なるほどね....」的な発見があって楽しい。

夜は夜で「いちばん初めにあった海」(加納朋子/角川文庫)読了。ミステリなのだけれど、どこかやさしくてファンタジックな雰囲気の作品。二作品のように思える一作品で、こういうちょっと凝った造りがいい効果を出している感じ。

四日

だらだら起きる。
この日した生産的な仕事は、namazuの設定。mknmzしてindexを作るとそれは正常に終了するのだが、いざ検索をかけてみると日本語ではヒットせず、NMZ.wを開いてみると文字化けしているという状況。
チュートリアルの日本語環境の部分などを眺めながら、env ja mknmz 〜 などと入力しても変わらず。結局、mknmzの引数に--indexing-lang=jaを追加することで正常に稼働するようになった。
どうもきちんと日本語と認識していなかったようで、nkfなどを用いてのコード変換が行われていなかった様子。ま、無事に稼働するようになったからいいか。

他には、「R.O.D.外伝」(倉田英之/スーパーダッシュ文庫)・「さみしさの周波数」(乙一/スニーカー文庫)・「殺し屋と月見うどん」(岡本賢一/スニーカー文庫)・「アウトニア王国再興録3 でたまか天下大乱編」(鷹見一幸/スニーカー文庫)を購入したくらいだろうか。
うーん、今月のスニーカー文庫はなんかわたし好みですねぇ。

五日

「R.O.D.外伝」を読んでから、当直業務に。休業中に大量の入院が入り、主治医も決定していないような状態ではあるものの比較的穏やかに過ぎる。
善きことかな。

六日

明けに大量の入院患者の申し送り。面倒なので「別紙参照」で済ませてしまった。(爆)
午前中は救急外来ということで、よせばいいのにわざわざ始業日までまって救急車できた上気道炎の老婦人やら発作を繰り返している気管支喘息の患者さんやらの対応に追われる。

午後は調子の悪い患者さんの対応に追われる。年明けに退院、の予定だったのだが、年末に調子を崩して以降下り坂。今日はX線上肺炎が疑われ、胸水もありそうとのことでCTも撮り、点滴も変更し....と大忙し。

七日

今月からは泌尿器科(外来を中心に)と病理検査科の並行で研修が進む。今日のプランは泌尿器科外来と自分の外来。
泌尿器科は前立腺疾患の患者が多く、次いで神経因性膀胱などでの排尿障害・膀胱がんなど悪性腫瘍・尿路結石などが守備範囲となる。そういう訳で患者さんは高齢の男性が多くなるのだけれど、ぱらぱら混じる比較的若い男性は尿路結石のことが多い。
右も左もわからなかったが、とりあえず途中からは腎・膀胱のエコー検査をさせてもらう。少しずつ勉強ですね。

自分の外来は(ひところの風邪の嵐も治まったようで)平穏に。最後に神経症の女性(わたしの外来の常連さん)と長話をしてしまった。

八日

一日、病理検査科の日。トップの副院長先生のご指導の下、先日お亡くなりになられた患者さんの病理解剖検体の切り出し。
「死体解剖」にも目的によっていくつかの区分がされている。医学部で学生の教育の一環として行われる解剖のほか、病因・死因を確かめ、医学研究に役立てていく「病理解剖」、法医学の面から死因を確かめ、犯罪捜査などに役立てる「司法解剖」など。
画像診断が進む前には、実際に解剖させていただくしか臓器の状態をつぶさに知ることはできなかったし、画像診断が進んだ現代でも、実際に調べることで得られる情報は少なくない。けれどもそこから情報をすくい取るためにはていねいな処理をしなければならず、その過程を学ぶのは有益なことだと個人的に思う。
──けれども、実際にはなかなか手が動かないのだな。

夜、医局出入りの書店に注文してあった「樹上のゆりかご」(荻原規子/理論社)が届いたので少し開いてみる。──これは、まんまわたしの出身校が舞台の話ではないか。(爆死) 多少のアレンジは入っているものの、伝統歌や合唱祭後河原に繰り出すことや実行委員会の連中の挙動や....。
自分自身も「室楽」をやりつつ「警実」の委員長なんかを歴任した、生徒活動にどっぷりはまっていた人間だけに、じっくり読んだらとても懐かしくなりそう。

九日

午前泌尿器科・午後病理科・夜当直の日程。
泌尿器科的には尿路結石が大はやり。普遍的な疾患であり一つ勉強しておきたい疾患でもあるので、個人的にはラッキー。
病理の方では昨日作った検体をパラフィン詰めして、薄切。──正確にはその途中まで、だが。

十日

当直は入院は多かったけれど、それ以外が比較的穏やか。

午前中で往診。一人新しい人が入っていたけれども、この人は痴呆がある上に進行癌とおぼしい病変が確認されている人。往診しながらターミナルケアに入っていかないといけないかもしれない。

十一日

午前出勤の後、夕方からZABADAKのコンサートということで、中野ゼロホールまで出向く。
ZABADAKのコンサートって初めてで、それでうんぬんするのも何だが、わたしと相方の好みとしては、PAが今一つ....。全体にヴォリューム大きめで特にベース・ドラムが強くて、ボーカルが聞こえづらいというのはいまいち。知らない歌が結構多かったということもあるとは思うのだが、今一つ乗り切れなかった感じ。
聞いてていちばん安らいだのはインターミッション的におかれた弾き語りの二曲。最後の方でだいぶバランスはよくなって、ボーカルも聞こえる様になったけれどもヴォリュームは最後までそのままだった。専門知識ないのにこんなこと書くのも問題かな〜と思わなくもないですが、でも書いてしまいました。
ま、「Easy Going」でノれたからいいかなぁ。

十二日

所用があって茨城へ。スーパーひたちに初めて乗ったかもしれず。
久しぶりに会う知人とかいたりして、用が終わった後サイゼリアで少しくっちゃべっていたりした。
行き帰りの車内で「樹上のゆりかご」の感想を書き、「でたまか」を読み、途中で「ほしからきたもの」(笹本祐一/ハルキ文庫)をGetし。なんか最近読書量が増えてきている感じ。

十三日

成人の日であったらしい。──ハッピーマンデーもいいけれど、今一つ雰囲気が出ない気がするのは何故だろう?

相方からのリクエストで日帰り温泉へ。湯に浸かってのんびりして¥1000也。それなりにいいものだけれど、同志多数につき日帰り温泉はかなり混雑していた。しかたないか。

十四日

午前中は泌尿器・午後は内科とそれぞれ外来。
自分の外来はそれなりに混んでいて、ちょっと雑な診察になってしまった感じで反省。終わった後指導医の先生からチェックが入っているのだけれど、そこでもそういわれた。
一人こまったのは不眠の人。これまでいろいろ投薬を受けていて、あまり効かないと言われてもっと効く薬を、といわれたのだが──。いわゆる睡眠剤って、使い続けるにはそれ相応の注意が必要だし、眠れない根本についての治療をしないと効果も十分に上がらないので、一発で綺麗に眠れるような処方にするのは難しいのだけれども....。
じっくり付き合う気で処方をした。

十五日

病理の日。本日は検体の薄切をやっているうちに終わる。手作業なのでついつい没頭してしまって、気がつくと時間が過ぎていた。

夜当直。そう遅くない時間に自分の患者のことで呼ばれる。今残っているのは悪性腫瘍の末期の人だけなのだが、譫妄状態で幻覚が見えたりして点滴もさせてくれないとのこと。話をしたり家族の人に来てもらったりしても落ち着かず、やむなく鎮静剤を使用。
この方は「自然の状態で看取って欲しい」というリビングウイルがある人なのだけれど、現実に「自然のまま」という言葉を適用すると、点滴をすることや投薬をすることを含むのかどうか、難しいことだと思ってしまう。結局は「苦痛緩和のみ」というような言葉に置き換えて対応するのだけれど、点滴で栄養を入れることももしかしたら「自然」とは言えないのかもしれないとも思った。

十七日

午前中往診。
薬がなくなったので、ということで臨時往診一つ。軽い気持ちでいったら、今一つ体調不良とのこと。呼吸困難感と食欲不振があると聞いては穏やかでいられない。一件目が終わるまでにかなりの時間を喰ってしまった。
その後は順調に進んだけれど。

夜、「ほしからきたもの」(笹本祐一)読了。
それから、「フィルムの中の少女」(乙一)も読み終える。乙一の小説で犯罪を扱った場合、ミステリとしては邪道だというか、手掛かりをさりげなく埋め込んで最後にあっと言わせるというよりは登場人物の心の動きの描写が面白い感じがする。「暗いところで待ち合わせ」なんかも心理劇として読んで面白いと思った。

十八日

朝から救急外来。多忙というか、離れる暇なしというか。一人片付くともう一人、という感じ。ほとんど丸投げ状態で午後の先生に引き継いでしまった人もおり、ちょっと罪悪感。
もっとも、そのつけは夜からの当直で払うこととなった。午後日直の先生が多忙で入院患者の診察まで手が回らず、入院患者の診察と初期対応に追われることとなる。もちろん各病棟でトラブルが発生すると呼ばれるし。呼吸状態悪化や発熱などが多くて大変。

この夜困ったのは慢性呼吸不全の患者さん。肺がいろいろな理由で機能が衰え、十分なガス交換が行なえなくなっているため酸素療法が必要だが、それだけでなく肺炎になりやすい(=呼吸状態が悪化しやすい)ため、入退院を繰り返すこととなる。
こうした方の中には、十分な酸素を取り込めないだけでなく二酸化炭素を体外に排出する機能も衰えてしまう人がおり、血中に二酸化炭素が蓄積してくる。通常、二酸化炭素がたまると人は呼吸を荒くして体外に排出しようとする(このため、息を止めていると二酸化炭素がたまって非常に苦しくなる)が、二酸化炭素がたまった状態が長く続いているとこの反応も鈍ってくる。結果、酸素濃度によって呼吸の回数が調整されるようになってくるのだが。こういう方にうっかり多めの酸素を投与してしまうと、酸素濃度が上昇して――体が呼吸をする必要がないと判断してしまい、最悪、呼吸が止まってしまう。
必要最低限の酸素量を見極めながら酸素をつかっていくというしんどい作業ではあるし、人によっては眠り込むと呼吸が不十分になってしまう人もいたりして「寝たら死ぬぞ」状態で目を光らせていたり。もちろん人工呼吸器を使えばそうはならないのだけれど、できるだけ使いたくはないし。
死に至る病、と聞いて思うのは腫瘍が多いと思うけれども、長い眼で見ると糖尿病や肺気腫(喫煙などによって起こる、肺が破壊される病気)も立派に死に至る病で、しかもこいつらはじわじわと年単位の時間をかけてからだを壊していく。
苦しんで苦しんで、何度も入退院を繰り返すくらいなら、いっそ余命三ヵ月の腫瘍が見つかったほうが楽なのかもしれない、と思うことはある。

十九日

当直明け。結構こまめに呼ばれて、多忙だった。
──なのにふと思い立って献血に行く。(爆死) 睡眠時間4時間と書いたら「少ないですねぇ」などといわれた。これが途中何度も起こされていると言ったらきっとやらせてくれなかっただろう...。(滅)
一時間ほどの採血中に「ファイナルセーラークエスト」(火浦功/角川スニーカー文庫)を読了する。献血のベッドというのは目の前にあるテレビを見るのにはラクだけれど、本を読むようには出来ていないのが問題ですな。書見台の一つも欲しいところである。(片手でページをめくるのはしんどいし)

二十日

一日泌尿器科の日。
午前中は外来、午後は手術。手術とはいっても小手術だけだった。膀胱ガンを削り取る手術と前立腺肥大を削り取る手術。──低侵襲で明らかな効果というお役立ちものである。大きくばっさりと切り取るのが華ではなく、いかに患者さんに負担をかけない小さな処置で治癒に導くかが外科医の腕の見せ所、という時代だなと思う。

夜は当直の見習い。残り番、ということで十時半まで。インフルエンザとかインフルエンザとか風邪とか....(苦笑) かなり大はやり。
ひとり、肝胆道系疾患ではと紹介されてきた人が実は呼吸器疾患だったり。見抜いた自分が何となく誇らしい。

二十一日

午後の内科外来は、指導医の先生が風邪でお休みという出だし。応援の先生も少し遅れて入るということで、結構忙しく過ごす。
やっぱり風邪系統が多いけれど、中には「咳が続く」というような人もいてちょっと苦労する。風邪と思って実は、というのは意外にある。

夜は病棟の飲み会。送迎会、ということだったが、定刻より約一時間も遅刻していったのに集まっていた人はめちゃ少なくてまだ始まってもいなかった....。このところ、各病棟とも多忙だからなぁ。

二十三日

午前救急。受け入れるベッドも少なく比較的暇....ではあったのだが、ちょっと込み入った事情を抱えた患者さんが来て行政の協力をお願いする。住所不定だったりすると、処方して帰すというだけじゃ冷たすぎると思うしね。
午後は病理。検体と格闘する時間が過ぎる。一口に検体、といってもさまざまな臓器があるし、染色法もさまざまでそれぞれに違った表情を見せる。それを見抜くのが仕事ではあるが....初めてのことが多くて戸惑い気味。慣れるしかないか。

二十四日

当直明け。比較的穏やかに。
午前中は往診だったが、剖検が午前中に行なわれることとなる。急いで帰って来たのだけれど、終わってしまっていて残念。
午後はそのまま病理実習に入る。大ボス(違)の先生が不在の日なので、中ボス(さらに違)の先生と一緒に標本を見た。

午後ケースカンファレンスの前に死亡症例検討会。当院初の試みとのこと。
急死された症例、慢性疾患の末期である場合、いろいろだったけれど、退院待ちの間に吐血〜肺炎〜呼吸不全となった患者さんがいた。
「もし」「たら」を言っても詮はないのだけれど、早く退院していたら、と思う。一方ですぐに再入院することになってしまうと、退院させなければよかったかな、と思う。神ならぬ身の上、先を見通すのは難しい。

二十五日

今日は受診日、と決めて病院受診。(勤め先) 受付の仕方を初めて知った。(滅)
待ってみるとやっぱり長い。土曜日ということもあって比較的空いてはいたのだけれど。待つ間に「月曜日の水玉模様」(加納朋子/集英社文庫)読了。
診察の結果は大きな問題はないだろう、ということになったのだけれど、ものはついでで内視鏡検査が追加される。ま、経験するのは大事だしね....(泣)

午後から某秘密プロジェクトの会議で池袋まで。単車を飛ばしてみる。‥‥けっこう寒い。(苦笑)
おやつ時から始まった会議は延々夜の十時まで。少々喉も痛かったし、早めに寝た。

二十六日

朝から会議再開。延々と議論は尽きない。何とか終わって、早めに戻った。 戻った後で自宅のPCの配置替え。終わってさてと電源を入れたら.....起動しないでやんの。そろそろやばいかな〜と思っていたHDDがきっちり死んだらしい。さて、どうするか。

二十七日

朝から発熱・咽頭痛・声嗄れ。だるさもあるので本日休暇とする。
午前中はばったり寝こけていたのだけれど、午後になると少しは体が動くようになってきたので、布団の中から「トップをねらえ!」とか観てしまったりする。
やっぱり疲れてたのかなあ。

二十八日

だいぶ回復したということで出勤。‥‥だが、昨日はなかった鼻汁に悩まされる。水様なので三分おきにかむ必要があるような感じで。どこにいても眼がティッシュペーパーを探しているような感じで、非常につらかった。

世間的にはインフルエンザが大はやり。院内でも予防接種をしていない職員へ予防接種を勧める連絡が出された。風邪とインフルエンザは似て非なるもの、で、悪性度もやっぱり違う。結構予防接種していない人はいるようで...。何せ、患者さんがかかればまず病院へ来る訳なので、やられる可能性は高いと思わないといけないのだけれど。

二十九日

鼻水はだいぶ改善する。昨日よりは過ごしやすい。
この日は顕微鏡とにらめっこ。身体的には楽だけれど、精神的にはそれなりに疲れる。  


Written by Genesis
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