[~taneのテクノモーター]

セガサターン専用ソフト

テクノモーター

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4,800Yen

テクノモーターのコンセプト
テレビバンド?
どうやって演奏するの?
テクノモーターはシーケンサー?
なんで『テクノモーター』?
なんでサターン?
インターフェースのはなし
デカパッド

テクノモーターのコンセプト
さて、この“テクノモーター”というのはいったい何か?というお話し。
テクノモーターは、コントロールパッドを使って音楽を演奏しよう!...つまり、セガサターンを楽器に変身させてしまうソフトです。
セガサターンを持っている人は、コントロールパッドを持ってみてください。パッドを下向きにして、左手を“ギターのネック”を握るように持ち変えて、右手の人さし指、中指、薬指をA,B,Cボタンにそれぞれ当ててみてください。どうです、なんとなく楽器っぽくないですか?。
去年(1996)のいつ頃だったか「なんか企画を出さないか?」という話があって、そんなアイデアを出したんです。その年の春にロサンゼルスで開催された“E3”というイベントに行かせてもらって、いろんなソフト(たしかマリオ64とかバーチャ3とかのデモをやってました)を見たときに「この先、ゲーム画面の中で何が起っても、もうビックリしないよな...」と思ったんです。
さらに、PCのエンターテイメント系では、いろんなカタチの入力装置(1:1スケールのコクピットとか、人が乗るサーフボード型コントローラーとか、ピックのカタチの奴とか...)があって、「入力装置も行き着いちゃったか?」と思っているところに、テレビ画面の前に本物のバイクが並んでいるブースを見つけたんです。「よくできてんな〜」と思いつつ、アクセルがちゃんと動くかどうか確認しようとしたら、バイクにまたがっているおっさんは、ハンドルは持たずに3DOのコントローラーを持ってレースゲームをしているじゃないですか!(バイクはただの椅子だったのです)。
とまあ、そんなわけでコントロールパッドもいいよな(?)と思いつつ、画像以外の出力系(=音)で面白いことができないか...と考えたのが“テレビバンド”という企画でした。

テレビバンド?
コントロールパッドを楽器のように持って、メロディや和音の演奏をしたり、パーカッション系の音を出したりできたら...、さらに、マルチタップを付けて10人で同時に演奏できたら...。そうしたら一台のテレビでバンドを組めるのではないか?。これが“テレビバンド”でした。いまではこの名前がレーベル名になっているのですが、とにかく最初の段階では「本当にコントロールパッドで楽器のように音楽が演奏できるか?」をテストして、最終的に今の“テクノモーター”になった訳です。

どうやって演奏するの?
基本操作として、X=ド、Y=レ、Z=ミ、A=ソ、B=ラ、C=シという具合に、各ボタンを鍵盤のように押して、音を出すことができるのです。
さらに、方向ボタンの左右を合わせて押すことで半音(♭と#)、上下でオクターブの変更ができるのです。
“ドレミファソラシド”とやるときは、X,Y,Z,Z+>,A,B,C,C+>とボタンを押せばいいんです。
これで、とりあえず音楽の演奏ができそうだということは確認されたのですが、この方法で曲を演奏しようとすると、本物の楽器のように練習をしないとダメだということも確認されました。
そこでテクノモーターには、もっとカンタンにメロディの演奏ができるように..ということで、半自動演奏のような機能をいくつか付けました。
たとえば、音階だけ先に登録しておいて、ボタンを押す度に登録した順に音が鳴るようにできる機能(メロディモード)というのがあります。
“ソミミファレレドレミファソソソ”という順番に音階を登録しておくとしましょう。で、タイミングをとりながらAボタンを押していくと...“ちょうちょ”が弾けるという寸法です。
他にも、コードが弾けたり、アルペジオができたり、とコントロールパッドの限られたボタン数の中で“音楽の演奏”に使えるであろうと思われる方法を考えていろいろと付けてみました。
L=ピッチベンド下げ、R=ピッチベンド上げという操作も付けたおかげで、事前にイメージしていたものよりもかなりイイ感じの“演奏感”を実現できていると思っています。


テクノモーターはシーケンサー?
結局、最初に考えた「テレビバンド」の構想は、主にインターフェイスの設計上の理由で同時プレイ人数を2人にすることに決定し、やむなく方向転換することにしました。
そこで必要となったのが、「自動演奏機能」でした。
テクノモーターでの曲の作り方は4段階に分けられます。
はじめに音色の設定である“ユニット”を作ります。これはバンド編成を作るような作業だと考えておけばいいでしょう。プレイヤー1の音色は?ベースの音色は?スネアは?バスドラムは?という具合に、音色の設定、ボリューム(32段階)、パン(L8〜R8)、リバーブ(8段階)を設定していきます。ここで特筆すべきは音色の量でしょう。テクノモーターには、なんと1万以上の音色が内蔵されているのです。これは楽器音やシンセの音色だけでなく、人の声や音楽の一部、ノイズ系など、サンプラーを使ったようなサウンドまで楽しんでいただけるように...と、大量のサンプリングサウンドを搭載した結果です。

つぎに、楽譜にあたる“パターン”を作ります。パターンはMIDIデータによく似ています。しかし一つのパターンは4小節しかありません。曲を作るためには、このパターンをいくつか組み合わせて作る事になります。パターンには、4音ポリのトラックが2つ、ベーストラック(モノ)、ドラムがあり、ドラムにはバスドラ、スネアetc..計6トラックが用意されています。シーケンスの分解能は最大32分、ポリのトラック、ベースではこの分解能で音階(6オクターブ)と音の長さ、ベロシティ(16段階)の設定ができます。もちろんドラム系でもベロシティの設定ができます。
つづいて“パッドセット”というものを組み立てます。これはリアルタイムプレイに関する各種設定を行うところなのですが、例えばコードの演奏をしたいのであれば、ココでXYZABCの各ボタンに和音の設定をすることになります。コードの設定の他に、アルペジオの設定、メロディ、フレーズなどもここで設定します。メロディというのは、音階だけココで設定しておくと、演奏時にボタンを押す度に設定した音階を次々鳴らすことができるというものです。たとえばココで「ソミミファレレ」と設定すれば、ちょうちょが簡単に演奏出来るということです。
そして最後に、全ての組み合わせを“ソング”として保存します。ココでは、パターンを再生する順番(最大16パターン、99連結可能)と、ユニット、パッドセット、BPMの初期設定をすることが出来ます。このソングを組み立ててはじめてリアルタイムプレイで演奏することが出来るようになるのですが、演奏に際してはユニット、パッドセット、BPMは変更することもできます。
ちょっと面倒な印象をもつかもしれませんが、予想以上の表現力を持った自動演奏マシンになっていると自負しています。一つにはやはり音色の豊富さが揚げられますが、パターンという概念を使ったことで曲作りを楽なものにすることに成功したと思います。上記の4つのパートはそれぞれファイルのようなイメージで保存されることになるのですが、特にパターンを作るにあたって、4小節というサイズは“吟味する”には適したサイズで、一つのパターンをキッチリ完成させてから、そのデータを変えて次のパターンを作る...というように曲を作っていけるのです。また、製品にはデモソング、チュートリアル的なパターンも用意する予定なので、これらを加工することで、まずは曲作りを楽しんでいただけることでしょう。
実際に演奏するときには、ココで組み立てたソングに、さらにパッドでの演奏を加えることになります。パッドの演奏/操作は完全に2人プレイに対応していますので、メロディやリードパートを割り振ってツインプレイをしたり、一人は演奏、もう一人はミキシングといった楽しみ方もできるでしょう。

なんで『テクノモーター』?
テレビバンドの試作が進んでいた時、色々な事情で同時に扱えるパッドは2つまでだろうということになりました。だったら自動演奏機能をつけないとダメだな...ということになったのですが、サターンでシーケンサーを作るとなると「どこまでできるのか?」というところでかなり不安要素がありました。ゲームで曲を作るのって結構ツラいし、できたとしても表現力低そうだし...、いっそ昔のリズムマシーンみたいにループパターン延々繰り返しちゃうようなシーケンサーにしよう!テクノだテクノ!!ということで“テクノ...”は決まりました。
さて“モーター”の由来は...というと、やはりマブチモーターから来ています。
テクノということで、ループするサウンド、スピード感のあるイメージを持つ言葉をいろいろと考えていると、ドライブとかグルーヴとかそんな感じに陥っていて「ちょっとカッコよすぎてツラいかな...」と思っていたところ、ふと『モーター』という単語が思い当たりました。
子供のころ、動くものを工作するときはいつもマブチモーター140とか120とか使ったものです。プラモデルの戦艦を動かすために、先月作ったスポーツカーを分解してモーターの移植をしたりして....。水中モーターとかミニモーターなんていうものありましたね〜。これはピッタリのネーミングではないか!
カンタンに動いて、スピード感があって、チープで、グルグル回って、アイデア次第でなんでも作れて、電気で動く!音楽ソフト→これは『テクノモーター』だ!!ということになりました。

なんでサターン?
「テクノモーターはセガサターンで動きます。」というと、「なんでサターンなんです?こういうのやるんだったらSSよりPSでしょう。SSっていったら格闘ものと美少女ものじゃないと...」とよく言われます。
理由はカンタンで、PSのコントローラーは“楽器っぽくない”からです。
どう考えてもPSのコントローラーでドレミを弾くのはムリがあるんですね。

インターフェースのはなし
さてさて今やCGは日進月歩。ゲーム画面なんかでなにが起っても誰もビックリしません。サターンが出たときは「家庭用ゲームでバーチャファイターが動く!」ことに感動したものですが、今となってはカクカク(ポリポリ?)した絵では皆さん満足しません。そんななか使ったこともないソフトで3Dモデルを作っても「なにコレ?」と言われるのは目に見えてますね。
そこで、テクノモーターの画像を設計するにあたり、一つの決まりを作りました。それは「目的は“音”であり、画面はあくまで演奏のための“グラフィックユーザーインターフェース(GUI)”である。」というモノです。
という訳で、テクノモーターの画面には無意味に動くものは、一切ありません。
一見、アニメーションの様に動いていても、それは全てユーザーに対して「動作の認識をさせるための手法」なのです。
テクノモーターの画面のひとつに、イラストのロボットが登場する画面があります。このロボットは、演奏をはじめると同時に激しく動き出すのですが、彼の動きはテクノモーターの自動演奏の状況をビジュアル的にユーザーに伝えるための“情報”になっているのです。彼はビートに合わせて足の爪先でリズムをとっているように見えますが、実はバスドラムの鳴っているタイミングを示しています。無意味に腰を振っているように見えますが、腰の高さはベーストラックの音階を示しています。目を光らせ、首を振っていますが、目はハイハットのタイミングを、首はスネアドラムを示しているのです。
人間は、同時に複数のことを認識する能力に限界があります。いくつものメーターが並んでいる(飛行機のコクピットのような)状況では、瞬時に全てを認識することは難しいことです。ところが、個々の情報を、例えば人間の顔のエレメント(目、鼻、口...)などに置き換えて比喩的にパターン認識させることで、瞬間的に状況を認識できる場合があるのです。
しかし、これはあくまで比喩的なもので、あまりリアリティを追及するものではありません。どういうことか...というと、もしこの顔グラフの表情をよりリアルに本物の人間に近づけるように作った(例えばDK96風?)としましょう。そうすると、正常に...なんの変化もなく物事が進行しているにもかかわらず、彼女はまばたき一つしないで“死んだ”ように見えてしまうのです。もし画像的にリアリティを求めるなら、変化を示す動作の一つ一つにたいしてもそれ以上のリアリティを追及しなければならなくなり、墜落の危機に直面したときにも、目を潤ませて涙を流して見せるようなことでもしないとならないようになるのです。
さて、訳が解らなくなったところで、結論をいうと、動きをリアルに感じさせるには、他の部分はリアルにしない方が伝わり易いということ。(話は違うが、この点からしてバスフィッシングはよくできていると思いました。)

デカパッド
ソフトの内容のおはなしではないのですが....
「テクノモーターはサターンのコントロールパッドを楽器にしてしまう!」といっても、セガ純正コントロールパッドを持って見せるだけでは「ナルホド、オカリナみたいなモノね」と、変に納得されてしまったりします(弾いてる本人はギタリストになった気分で気持ちよくチョーキングしているのに...)。で、「ちょっとやっちゃおうか?」ということでプロモーション用に通称“デカパッド”を作ってしまいました。

見ためは、色といいカタチといいサターンのパッドそのものなんですが、問題のサイズは..というと、ちょうどエレキギターの本体部分くらいの大きさで、パッドの両端からストラップを付けて、ショルダーキーボードのように肩にしょって演奏できる、というジャンボギョウザのようなものです。
まるで「放射能を浴びて巨大化してしまった」ようなコントロールパッドも、はじめは試行錯誤からはじまりました。アイデアはすぐにでたのですが、実際に動作するものでないと意味がありません。そこでまずはどういう仕組で可動するデカパッドを組み立てるか?の実験をはじめました。まずはクールパッドを観察しました。これを見るところボタンと基盤は一体化しているらしいことを発見しました。「コレを大きくするのはムズカシイかもしれない...」とは思ったのですが、ものは試し、サードパーティ製の安売りパッドを分解→アキハバラのパーツ屋でボタンを購入→チップの埋っているプリント基盤の配線がむけているところに、とりあえずハンダ付けしてみました....と、何てこともなく動くじゃないですか?
で、ちょっと大きめのお弁当箱にボタンが付けられるように穴をあけて、プロトタイプのデカパッドを作ってみました。
問題は方向キーにあると思われました。方向キーは、配線的には他のボタンと同じ様なもので、上、下、右、左の4方向に配線がされていて、ナナメというのは実は2つの配線に同時に信号が行ったときにそうなるようになっているらしいにです。とりあえずなす術もなくこの4方向に相当する普通のボタンを取り付けておきました。で、実際にナナメらしい操作をするとちゃんと動くんですね〜。これで機能的にはデカパッドは作れると確信しました。
あとはこのプロトタイプの中味を入れられるパッド型の何かがあれば完成なんですが...。これが実は最も大変でした。結局はプロ(実は私の兄)に依頼することになったのですが、まず造形しやすい発砲素材で型をつくり→これを表面処理の後、型抜きしてメス型を作り→さらにこれを素にしてFRPで成形します。→ボタンを組み込むための穴を空け→別々に着彩したボタンと本体を組み立て→配線します。
しかしこの時に気を付けないと、AボタンがCボタンになっていたりするので、最終的には全ての配線の途中にジョイントを設けて、位置関係を自由に修正できるようにしました。
現在、可動デカパッドが2つ、未配線のモノが2つの計4つのデカパッドが完成しています。ちなみに総予算は...ちょっとアレなんですが、1コに付き数万円です。


テクノモーターのホームページがあります。
http://www.dms.co.jp/tvband/


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