デーテーペーな1日

7月9日(Tue)
性懲りもなく始めてしまった私小説的日記。セクシャルで無頼な、そんな幼い頃のお話・・・落ちきることのできない臆病者は、うわべをなぞるだけの、怠惰な暮らしにのめり込んでいた。例によってどこまでが真実で、何がフィクションなのか、ことさらに曖昧なままでいることがなにかと好都合なようです。ひょっとすると、あなたの人生なのかもしれません。そんな愚かな過去をくり返すためのバックナンバーはこちら。

深い霧のなかで・夜 [PART 1]
深い霧のなかで・夜 [PART 2]



深い霧のなかで・夜 [PART 3]

 3日目の夜も、やはり私は彼女と一緒に店にいた。

 さすがに3日目ともなると、お互いに下着や替えの洋服が必要になってくる。出勤途中のタクシーを待たせると、私を連れて下着と替わりの洋服を慌ただしく買物する。
 なぜこんな無意味なことをするのか・・・部屋に戻れば替えの洋服も下着もあるはずの彼女が、まるで帰る素振りを見せない。私も仕事に行くとは言わなかった。その事をお互いに触れようとしない事で、暗黙の了解は成立していた。
 食事はホテルのルームサービスでとった。店が終わるとそのままタクシーに乗り、ホテルに向かう。夜が明けるまでなんどもSEXし、そのまま死んだように午後遅くまで眠っていた。
 何度かのコール・・・フロントからの電話に不機嫌に答えると、もう一度私の腕のなかでまるくなって眠った。
 すっかり顔馴染みになってしまったボーイや彼女の同僚達と、薄暗い店内で軽口を交わす。また今日も一緒?あきれたように振り返る女にも、私は愛想良く笑いかける。
 今夜の彼女はとても忙しそうで、私のテーブルで落ち着くことがなかった。立ち止まって私の肩に手を置き、ごめんなさいね、と小さく耳元で囁くと、そのまま階段を駆け上がる。私の隣では、どうみても未成年としか思えない幼い女が、くったくなく笑っている。私と彼女との関係がひどく気になるらしく、うるさいほどに話しかけてくる。
 3日前にはじめて会っただけでよく知らないと答えると、ひどく驚く。そう言えば、私は彼女の店での源氏名以外、本名を聞いたことがなかった。
 話し続ける彼女が息をのむ気配に顔を上げると、通路にたって私を見おろしている男がいた。短く苅った髪と灰色のスーツ。それ以上のことは覚えていない。実は私はその夜の記憶がほとんどない。後になって何人かの人間から事の顛末を聞かされて、そうなのかと納得しただけだった。
 無言のまま、男はテーブルの上のビール瓶で私の耳の上あたりを力まかせに一撃する。もうそれ以後の記憶は私にはない。

 実は、この後書きめいた部分が私の本当の日記なのかもしれません。では、毎日それなりの時間をかけて書いている文章はいったい何?後書きのためのアペリチーフ?濃厚な前戯?助走のための最初の一歩?
 にわとりが先かたまごが先か、いやはや、考えこむと何やら面白そうな気配もしたりして・・・己のしっぽを飲み込んだ蛇のように、同じ処をぐるぐると堂々めぐりする日記。おもしろがっているのは、やはり私ひとりかもしれません。



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