傷つくことに疲れ、生きることに厭きた君と僕は、おずおずとお互いの存在を求めてまわりを探っている。誰かがそこにいることは分かる。微かな息づかいや自分の中で脈動する心臓の鼓動を意識する。臆病な獣のように、お互いの傷口を隠し、いつでも逃げられる姿勢のまま、それでもお互いの存在を確かめずにはいられない愚かな人間。 漆黒の闇の中で、私の指先が伝える・・・彼女の額、不安げに瞬く瞼、浅い呼吸の度に小さくあえぐ唇、うなじの後れ毛。 大丈夫、恐がらなくていいんだよ。私の二の腕の辺りを掴んだ彼女の指に力が入るのが分かる。抱き寄せる。干し草のような懐かしい匂いがした。彼女の泪の匂いかもしれない。孤独な魂が出会えた時と場所の記憶。 この瞬間を大切に思う気持ち、それをどう名付けるか?もはや現代では敗北してしまった感情にとらえられた私は、大切にしたいと思う反面、はたしてこれは現実なのかと、自問する。お互いの顔すら見ることの出来ない闇の中、意味のないモノを、意味有るモノと誤解しただけなのかもしれない。こんな寒々とした景色の中で出会った二人の関係が現実な訳はなかった。徒労こそが人生の目的ではないのか? もう、その徒労を貴重なモノと思えなくなった私は、再び闇の中へ歩き出す。誰かを求めているのか、拒絶しているのか、何も分からないまま。
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