デーテーペーな1日

8月10日(Sat)
 私のまわり、と言っても実生活ではない。いわゆるバーチャルな世界に住む住民たちについてのお話です。

 思えばわたしの人生はとても早く、手の打ちようがなくなってしまった。十八歳の時、もう手の打ちようがなかった。十八歳から二十五歳のあいだに、わたしの顔は予想もしなかった方向に向かってしまった。十八歳でわたしは年老いた。

 マルグリット・デュラスの有名なL'AMANTの冒頭何行かに置かれた有名な一節です。とおり一遍の知識と何十年か前に読んだ、ほとんど印象だけの記憶を確かめるため、文庫本を買って改めて読んでみました。
 聡明な少女が、その聡明さ故に見てしまった映像(イマージュ)に魅惑される物語なのだが、むろん、一筋縄で理解する事の出来ない映像(イマージュ)の錯綜と混濁に、改めて惹かれるところがあります。

 さて、

 何故、ことさらにマルグリット・デュラスなのか?実はまだわたしの中でハッキリとはその事の答えは見つかってはいません。
 彼女の裡の息苦しい迄の自閉と自虐の瞬間と、冷静にそれを見つめる彼女自身の強さについて、お伝えしたい方が、何やら私のまわりにとても多いような気がしているのです。
 とりわけて、そうした方を見つめる私自身の暗い過去の記憶のせいなのか、それとも、世紀末の時代に生きる人間が背負う神なき時代の原罪が、彼女たちを苦しめている結果なのでしょうか?
 それが癒されることで、あなたの苦痛は初めて意味を持つのです。癒しのない、苦痛のための苦痛を耐える事の出来る人間はこの世界には存在しないのです。人間として生きるためのちからをあなたが再び取り戻すことができますよう、今夜もまた、私は電子の海でひとり溺れる者の夢を見続けるのかも知れません。

 あなたの事を書こうとしましたが、どうもうまくまとまりません。あなたに重なる記憶が多すぎて、息苦しくなるのです。メールで済ますことを日記に書くのは、秘かな意味があるのかも知れません。私とあなたにしか理解できない理由、その記憶を共有する事で可能になる関係性が私の望みなのでしょう。形のないモノばかり追いかけることはもう終わりにしましょう。この世界には、もっと確実なものが確かに存在しているのです。恐れることも絶望することもありません。人間は皆恐れ、絶望しているのですから。



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