で、僕がひそかにあこがれる病気のひとつに、ナルコレプシーがあります。嗜眠症などと漢字で書いても何やら訳ありげで、胸騒ぎのする名前ですが、Narcolepsy(睡眠発作)と呼ぶのが正しいようです。
　色川武大というより、麻雀放浪記の作者として有名な阿佐田哲也がこの病であったことは、本人が事ある度に自らの作品の中に書いている事で広く知られている。日常の生活の些細なきっかけ・・・それがきっかけかどうかも不明なまま、突如として数分から数十分も眠り込んでしまうという、不思議な病気。数秒間という短い発作もあるようで、時として理解できない没入に陥る当人を、ともすれば怠け者・情緒不安定と周囲の人間は考えがちなのだが、これが阿佐田哲也の手に掛かると、何やらとても楽しい病気の様に思えるから不思議。パイをつもったとたんに発作が起きてしまい、妄想の中でいきなり「ロ〜ン！」などと叫んでチョンボを喰らう麻雀など、本当に一度参加して見たかったと思います。
　さらに、ナルコレプシーには入眠事幻覚という、まるで埴谷雄高の闇の中に眼を閉じたまま暗い頭蓋のなかを意識の眼を開いてながめつづけるさまのような、入眠時にさまざまな幻覚に襲われる魅力的な一瞬があるらしい。幻覚と言い、妄想と断じられる人間の心の乱れこそが、睡眠中に見る夢に対応する、覚醒時に見る夢＝目覚めつつ夢見る事、ではないのか？

　しかし、

　それはただの狂気なのだと言われれば「然り」とお答えしておきますが、では「狂気」に対応する「正気」とは？
　ありきたりの断定にありきたりの反論・・・つまり、それは僕の趣味の問題なのかもしれません。うん、趣味として罹患するなら断然ナルコレプシーが良いな。

　う〜ん、いったいこれは何について書かれている日記なのか？本人にも不明のままです。「人間嫌い週間」は終わりつつあるのでしょうか？こちらも不明。つまりは、「不明な１週間」とでも呼んだほうが内容にそっているのかもしれません。

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