何時までも団鬼六のパロディ日記みたいなものを書き続けていてもしょうがない。もういい加減にやめてしまいましょう。何より本人が厭きております。 祭りの後の気怠い後悔のように、熱狂の記憶だけが色濃く残っているような町だった。 住宅地を抜け、何度か角を曲がると少しづつネオンの数が増えてくる。路上には客引きらしい男女が所在なげにたたずみ、私達一行を値踏みして、そして会話に戻る。土曜の夜だというのにほとんど行き交う人の姿はなく、ネオンが消えたままの店も何軒か・・・村上龍の有名な小説中で語られたような熱い鼓動の予感はどこにも感じられなかった。 ただ、うずくまった猫のように気怠い空気には、一種の匂いの様なモノは残っていた。欲望と恐怖が滲んだ汗と青臭い精液の匂い。基地の町に共通する、日本人のメンタリティの裡にはない暴力とSEXの予感がない混ぜになった危険な匂いなのかもしれない。フッサ・ヨコスカ・コザ・・・ 遠くからでもベースとドラムのリズムだけは伝わってきていた。木製の小さな扉は開け放たれ、その奥からリズムとメロディが折り重なるように路上に溢れてくる。扉をくぐると穴蔵のように続く通路の片側にカウンター。そこでチャージを払う。飲み物もそこで注文するようだ。全て前金制。左手の甲に緑色のスタンプを押されて、アミューズメントな気分はいっそう昂進される。 通路の奥、15坪ほどのフロアーはすでに満席で、先ほどからステージでの演奏は続いていようだ。音楽のジャンルを正しく判断する知識のない僕は、こうしたステージはいつも新鮮だった。まず、正確な日本語で叫ぶボーカルの声の質と音の厚みが、大人のロックを主張している。少年のようにボーィッシュでスリムなトランペットの少女がリズミカルにステップを踏み、決して若くはないボーカルと客席の間の乾いた共感が僕には心地よかった。 終わってしまった祝祭を懐かしむでも回顧するでもない、そんな確かな実感に充たされた自分たちの"いま"を楽しむ空気に、僕もまた同化していくようだった。
この町のライブスタジオ・・・いや、この町に夜に来たことすら初めてでした。なにやら観光地化したゲート前の商店街と昼間の気怠い空気の裏通りに、熱気はすでに覚めきっているものとばかり思いこんでいました。確かに、燃えるような熱気はすでに何処にも見当たりませんが、白く退色した灰の下にも、未だ熱いモノは消えてはいないようでした。 風化した熱波の記憶・・・ふと、そんな言葉が浮かんだりする。
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