一人ソファーで眠る彼女の横顔をそっと盗み見た。何かしらとりとめのない衝動のようなモノに捉えられたままの俺は、このまま夜が明けるまでこうして彼女を見ているのかもしれない。初対面の男女が、一室で夜を空かすために深夜のオフィス街を歩いているときから、俺は強く彼女に惹かれていた。徐々に明けようとする空を眺めながら固く勃起している自分自身に戸惑い、その事でもう一度彼女への気持の傾倒を確かめるのは、こういう事態に不慣れな俺らしいと、ふと自嘲したいような気分。 ここ何ヶ月かの不可思議な衝動は、すべてこの出会いのために用意されていたのかと思いたいが、そうした俺自身の妄想を深めることを少しばかり恐れているもう一人の俺がいた。何事につけ臆病な俺は、長い間、じっと自分の巣穴に閉じこもり、外界からの刺激に触れることを拒否し続けてきた。いつしかそれが生来の習い性となり、妄想のうちで愛撫する不定形の「おんな」のイメージにのみ欲情し、何度も自慰をくりかえしていた。 しかし、現実に俺の前に現れた彼女は、まるで俺の妄想の主とは違っていた。明るく笑う彼女の笑顔に切り取られたちっぽけな俺の自我が、胸の裡でずっと俺に囁いていた。やがて夜が明ければ、この不思議な一夜をくり返し思い出す俺がいるに違いない。こうして一歩を踏み出した俺の妄想が、現実と共鳴するか軋轢とともにすり切れるのか?その事で思い迷う事はもうヤメにして、俺は俺自身の妄想に執着することにした。 気怠い朝の予感とともに、なにかが確実に変わってしまったことを、俺ははっきりと意識していた。目覚めつつ見る夢・・・それを求めているのか恐れているのか?今の俺に、答えはない。 さて、本日の不明日記は、特別に不明度が高いかもしれません。特別限定増刊号・又は憑依する日記と言うヤツです。何を物好きな、と我ながら思いつつ、しかしやってしまうところが症状がかなり進んでいる証拠。申し訳ない。明日こそ、もっと面白いネタで日記書きますから本日は目をつぶってやって下さい。
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