デーテーペーな1日

日記関係の発言はこちらで。
10月28日(Mon)
プレゼント

 テーブルの向こうに座った男が不意に怒鳴りだした。あたり構わずという奴で、店内は勿論、表通りに面した窓から珍しそうに覗く人間にもまるでお構いなしだった。愚かしくうろたえ、みにくい言い訳に終始する男がたまらなく疎ましい。こんな男とSEXし、その上身体の中になにやらもうひとつの男の分身を宿していると聞かされてからは、一層その嫌悪感は募るばかりだった。なぜこんな男と・・・
 まわりの景色が存在感を失い、男の罵声も潮が引くように私の中から遠のいていく。私のまわりの景色から色が失われていく。何かしらの喪失感に包まれ、私は私自身の身体に目を落とす。紺色のタイトスカートの下の下腹部に。
 そう、まるで私とは無関係な「モノ」が自分の体内で成長し続けているような違和感。下半身から石ころでもねじ込まれてしまったような不快感が付きまとう。それは・・・例えて言えば、もう3ヶ月以上もない、あの生理の鈍痛のようだった。固くしこった卵巣が痙攣している事を意識する。不意に身体の中で粘液質の固まりがぞろりと動いたような気がした。まだ胎動を感じるには早すぎる筈だった。もっとヌメヌメとした質感。リンゴほどの大きさになった私の子宮と、その内側の羊水に浮かんだ、いまだ人間とはいいがたいモノがはっきりと見えたような気がした。

 怒鳴り声に我にかえると、空のグラスを持った男と、胸元から顔にかけてびしょ濡れになった私がいた。
 みにくく激高する男の口元にたまった白い唾液の泡。隣のテーブルでくすくす笑っているカップル。カウンターの向こうで、グラスを並べながらじっとこっちを伺っている男の汚れた爪。何もかもが耐え難いほどの理不尽さで私を襲う。
 私はテーブルの下で、スカートの中に手を入れる。爪を立て、私自身の裡に一気に突き立てる。身体の奥深いところからわき上がる快感に一瞬目の前が白くスパークする。指先がかすかな脈動に触れる。そっとなでる。そのまま、怒りとも快感ともつかぬ衝動のまま、体の中から引きずり出したモノを目の前の男の掌の上に置いた。裸のネズミのようなそれは、血まみれのまま、男の手のなかでヒクリと動いた。

 やはり、人間は自らに置き換えるとき、もっともその「恐怖」を実感するのだと思います。勿論、こんな経験があるわけではありませんが、何時か見た悪夢のワンシーンなのかも知れません。いや、夢は実生活の投影だとするならば、やはりこんなプレゼントをもらった経験があるのかも・・・


Backwards   Forward

ゴミ/ 妖し/ デジ/ 024/ 武市/ ワッキー/ 赤尾/ 野原/ しお/ かお/ みや/ のほ/ よろ/ 立花/ haru/ 行っ/ 吉田/ 献血/ ギター/ 書評/ 留学/ わっ/ 塵芥/ 雑文/ 流言/ alice/ pon/ 海苔/ もみ/ 闘プ/ 海月/ 司法

Back to HomepageMail to Yaku

1996年のバックナンバーはこちら。
01/21~3102/01~1502/16~2903/01~1503/16~3104/01~15
04/16~3005/01~1505/16~3106/01~1506/16~3007/01~15
07/16~3108/01~1508/16~3109/01~1509/16~3010/01~15