やはり、そういうタイトルになりますか・・・東大卒の父親が息子を金属バットで撲殺! ほとんど想像通りのタイトルで騒ぎ立てるワイドショーにはうんざりです。手垢にまみれた手法で耳にセンセーショナル部分を強調する、その発想の貧困さはまさしくハイエナの思想ですね。 只でさえ耳目を集める家庭内殺人の、その加害者の父親が東大卒だと聞いて「イケル」と考える人達の心はやはり病んでいます。警察発表と無責任な近所のうわさ話でお手軽にまとめられた「ある家族の悲劇」・・・そうした薄っぺらな報道には、その裏側で生きる生身の人間に対する一片の感慨すら感じられない。 我が子の誕生の日の瑞々しい記憶と、もはやそれが永遠に失われてしまったことへの後悔と自責。さらには、疲労と苦痛をもたらすだけの存在と化した「モノ」への限りなき自問。狂ったように荒れ、憎悪に濁った瞳の中に紛れもない自分自身を見いだしたときの狼狽と絶望。そうした日々を想像するだけで僕の心は暗く閉ざされてしまいます。 最近なぜか初老や老境と呼ぶべき世代の犯罪や事件に、殊更のように不安な調子が混じっているような気がするのは、例によって僕の思い過ごしでしょうか?あらゆるモノを求めながら、すべてを拒絶する魂の孤独の深さが、とがった刺のように僕の内側でささくれ、いつまでも記憶の片隅に横たわっているのです。 路上に放置された車の中で病死する夫婦、日の射さぬアパートの一室で餓死する親子、枯れ木のような老婆の死体を工事現場にそっと捨てる男・・・すべてに共通するその「声なき叫び」が、僕にはまるで断末魔の獣のそれのように聞こえるのです。癒しのない世界をさまよう彼らには絶望すらも見当たらず、ただ空虚な穴を覗き込むような虚無感だけがとても深いのです。
深夜寝入った我が子の横顔を眺めながら、そっと持ち出した金属バットの重みについて語ることの出来る者は、やはり同じ夜を過ごした人間だけなのかも知れません。僕自身、所詮はワイドショーのスタッフと同じく、傲慢な大多数の一人である事を自覚するしかないのでしょう。
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